2017年4月20日
トランプ政権がイラン批判を強めている。
選挙運動期間中から、イラン核合意を「最悪の交渉取引」と語っていたが、19日(日本時間早朝)にはティラーソン国務長官がイランについての記者会見で、更に強い口調で「イランの核への野望は国際的安全平和に重大なリスク。イランは北朝鮮と同じ道を辿り、世界を引きずり込む。」と警告を発した。
「イラン核合意はイラン非核化の目的を達せず、核国家になる時を遅めただけ。」とも語り、イラン核合意に懐疑的な見方を明確に打ち出している。
シリア国内の過激派を支援して、テロの最大のスポンサーとの非難も変わらない。ホルムズ海峡での米軍兵拘束事件も改めて持ち出している。
この記者会見に先立ち、書面でも「イランへの経済制裁解除が米国の国益に適うのか再検証」と、トランプ政権としての対イラン政策方針の方向性を明らかにしていた。
イラン側は、かねてからトランプ大統領の敵対姿勢に反発している。穏健派とされるロウハニ大統領でさえ選挙を控えることもあり、国内向けにも対米強硬姿勢を見せている。
トランプ大統領の親イスラエル姿勢に対し、国家軍事記念日パレードでは「イスラエルに死を」とのバナー付きミサイルまで誇示した。
仮に核合意が廃棄されるようなことになれば、イランに対抗してサウジの核武装化の可能性が生じる。イスラエルは前例はあるが、イラン国内の関連施設限定空爆を開始するかもしれない。シリアと異なり原油大生産国であり、ホルムズ海峡封鎖リスクも高まる。
原油価格は昨日、米国在庫急増により急落したが、その前にはリビアの主要油田が武装勢力により供給停止に追い込まれ、フォースマジュールが宣言されたことで原油価格が急騰する局面もあった。やはり地政学的リスクには敏感である。
内向きアメリカ・ファーストを唱えるトランプ政権だが「世界の警察」としてシリア、北朝鮮に続きイランも敵に回すような動きに出る可能性が無視できない状況だ。そもそも、新政権誕生まもなく内部人事も大幅に遅れているのに、中東とアジアの二面作戦に臨むことにはおのずと限界がある。
かくして、日替わりメニューの如く様々な地政学的リスクが入れ替わり顕在化している。市場にはややリスクに麻痺したかのような反応も目につく。あれだけフランス大統領選挙リスクを囃し急騰していた金価格も、いよいよ第一回投票を週末に控えるというタイミングで10ドルほど急落した。有事の円買いも、有事の金買いも、結局プレーヤーは短期投機筋のヘッジファンドなので一過性の現象なのだ。事態に劇的な進展がなければ、焦れて売り手仕舞いを急ぐことになる。但し地政学的リスクが多用化して、その一過性の乱高下が繰り返されることが今年の特徴ともいえよう。
さて、こんなことも含めて今夜10時半頃から日経プラス10にスタジオ出演。世界経済リスク総点検。続いて夜11時テレビ東京ワールドビジネスサテライト(BSジャパンは夜12時から)では「有事の金、いつまで続く」とのテーマでビデオ出演。
それから今朝の日経朝刊商品面には、金プラチナ値差が300ドルを超えたとの記事。私のコメントは補足すると金が有事で買われたが、産業用素材のプラチナは有事で買われない。商品と通貨の二面性を持つ金と、純粋なコモディティ(商品)であるプラチナの違いだ、との意味合いだ。