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トランプ大統領を意識?イエレン議長の本音は?

2017年6月13日

「バーナンキさん、あなたのやり残したバランスシート縮小という仕事を私は引き継いだわけですね(笑)。」

昨年4月7日、ボルカー、グリーンスパン、バーナンキ、イエレンというそうそうたる現元前FRB議長たちが、フォーラムで討論した時のイエレン議長発言である。冗談めかして笑顔で語ったが本音であろう。バーナンキ前議長はばら撒くだけばら撒き、私はその後始末、との思いが滲む。

量的緩和も壮大な実験であったがその結果、約4.5兆ドルにまで膨張したFRBバランスシート縮小も、全く未知の領域で壮大な実験である。

イエレン議長には、その難題に少なくとも任期中には道筋をつけたいとの義務感があろう。

一方、バーナンキ前議長は、自らの「テーパリング(緩和縮小)発言」が所謂バーナンキショックを誘発した苦い経験を持つだけに、自らのブログでも「バランスシート縮小は、とにかく慎重の上にも慎重に」というようなニュアンスの言い回しで警鐘を鳴らしている。

そのバーナンキ前議長に比し、イエレン議長はもう一つ難題をかかえる。

トランプ大統領の存在だ。選挙運動中には「現FRB議長は更迭する。」とまで言い放った。

イエレン議長の任期中にも、既にトランプ大統領が選んだFRB副議長・理事が徐々にイエレン議長率いるFRBに「入閣」しつつある。米国の中央銀行はトランプ色に染まってゆく。

しかも、トランプ大統領はFOMCの機先を制するがごとく「私は低金利を好む。」と公言して憚らない。ここでイエレン議長が利上げを先送りするようなことがあれば、FRBの政治的独立性が問われかねない。

更に、トランプ大統領の提唱する大型減税・インフラ投資などの財政政策の実現性も、金融政策決定にあたり重要な判断基準になっている。

利上げ決断は「データ次第」とされるが、実際は「トランプ次第」になりつつあるようにも見える。

市場はイエレン議長が年内にも金融正常化の最終段階に踏み込むと読んでいる。

その場合バランスシート縮小を開始すれば、利上げは「一回休み」となりそうだ。イエレン議長の側近NY連銀ダドリー総裁も、その可能性に言及している。

今回のFOMCでは、利上げとバランスシート縮小との組み合わせについてどのような議論が行われるのか。これまでになかった新たな視点が重要となりそうだ。

さて、貴金属市場で話題の一つがプラチナ価格(940ドル台)とパラジウム価格(900ドル前後)の接近である。

実は6年前日経BP社から発行されたムック本の巻頭対談の見出しが、プラチナ・パラジウム価格が同じになるというものだった。

既に6年前からその可能性を見抜いていたのが、元GFMS社長ポール・ウォーカー氏だ。いわく「今後4~5年でプラチナとパラジウムのパリティー(同価格水準)があり得る。実は南アのプラチナ生産者はプラチナだけを生産しているわけではなく、同じ鉱石からパラジウム、イリジウム、ロジウムなどのレアメタルが採れる。プラチナは供給過剰が続き、パラジウムは供給不足が続くとパリティーも考えられるのだ。南アの生産者はパラジウムとロジウムに収益源を依存している。一方、プラチナは言わば副産物としてできてしまうメタルだから「売らなくてはならない」状態。なお、パラジウムのリスクはスイスのチューリッヒに世界の投資家が保管している在庫が800万オンス存在することだ(筆者注、ここで語られているのは6年前の市場の数字)。

ポール氏の先見性に脱帽です!

そして、今日の写真は大阪出張から帰りの新幹線に持ち込んだ好物のタコ焼きと明石焼き。一仕事終え、至福のひと時です(笑)。 勿論お店で食べるのが断然うまいけどね。私の御贔屓は天王寺駅裏というディープな大阪にある「山ちゃん」。セミナーの当日打ち合わせなど、わざわざ事務局がここを手配するほど(笑)。

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それから、ライ麦100%のパンを大岡山でマガーリのマダムが見つけた。

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東京にはなかなか100%がないので発見したらさっそく試食。種子類も入っていておいしい。ライ麦100%だと普通は堅すぎて、包丁で切れず生ハムスライス用機械を使うほど。残った分は冷凍して保存できる。はまっています。

2017年