豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 新FRB体制、タカ派ドル高志向の兆し
Page2443

新FRB体制、タカ派ドル高志向の兆し

2017年11月30日

トランプ大統領はカーネギーメロン大学マービン・グッドフレンド教授を空席のFRB理事ポストの1人に指名した。

ずばりタカ派の人物だ。テーラールールによる金融政策決定を支持する。独立したFRBの「恣意性」は利上げが後手に廻る傾向があると論じている。インフレターゲットに関しても、FRBはインフレ率が「議論の余地のない」ところまで上昇するのを待つ傾向があると指摘している。一方、FRBが先行的に利上げに踏み切った事例として、1983~84年と1994年の引き締めを「大成功例」として挙げている。このケースでは、インフレ圧力が未だ目立たない時点で引き締めを開始したことを評価しているのだ。

量的緩和についても購入対象債券は国債に限定されるべきで、MBS(住宅抵当債券)など民間発行債券を独立したFRBが購入すべきではないと論じている。そもそも量的緩和にも公的部門と民間に高水準の債務を残す懸念があるとの理由で批判的である。FRBバランスシート膨張を警戒しているので、資産圧縮プログラムも「現行のペースより急ぐべし」と考える可能性がある。ここは市場として大いに気になるところとなろう。

更に、イエレン氏と異なりマイナス金利政策を支持している。

なお、同氏は以前リッチモンド地区連銀でエコノミストとして長年在籍して、FOMCにも定期的に出席していた。その後、外国の中銀アドバイザーを経験して「国際派」の定評がある。世界の中央銀行サークルの中でも一定の存在感を保つ。

市場はグッドフレンド氏指名にやや警戒的である。FRBの独立性についてやや否定的な見解を示していることが、トランプ大統領のお眼鏡に適ったのではとの見方もある。

総じて、来年のFOMCメンバーにはタカ派が増えるとの予測が根強かった。昨日本欄で、ジョン・テイラースタンフォード大学教授がFRB議長選は落選したが、副議長として「敗者復活」の可能性があることを論じた。同氏もタカ派である。

イエレン氏が理事ポストも辞することでイエレン色は抹消され、トランプ色が強まることは間違いない。

グッドフレンド氏指名もFOMCがタカ派色を強める兆しと読める。外為市場では2018年のドル高円安要因として吟味されることになろう。

2017年