豊島逸夫の手帖

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次期FRB議長最有力候補はドル高円安志向か

2017年10月4日

トランプ大統領が2~3週間後に発表する予定の次期FRB議長人事を巡り、市場でも関心が急速に高まっている。

そこでオンライン賭けサイト、プレディクトイット(Predictit)の賭け率などが話題になる。10月2日時点でウォーシュ元FRB理事が41%(急上昇中)、パウエルFRB理事が27%、イエレン議長が18%、コーン国家経済会議委員長が16%とされている。これらの数字はあくまで参考指標のひとつに過ぎないが、ウォール街でもウォーシュ氏優勢の見方が目立つようになった。

その理由は、

1)トランプ大統領が設置して解散された「戦略・政策フォーラム」に参加していた。

2)金融機関の規制緩和論者で、トランプ政策の方向性と合致する。

3)2000年代初頭のブッシュ政権で経済顧問を務め、経済政策について議会への説明役の経験がある。

4)義父がトランプ大統領の親友

とされる。

市場が最も気になるのはウォーシュ氏の政策だ。

まず筋金入りの現FRB批判論者である。博士号を持たない異色のFRB議長候補でもある。エコノミスト集団を「ギルド」に例える。

そもそもリーマンショック後の超金融緩和を続け過ぎているというのが持論だ。中央銀行はローレンス・サマーズ氏らの「経済停滞論」に影響され過ぎており、SP500という株価指標の「奴隷」になっていると語る。

インフレターゲットにも消極的で、物価目標2%から1%への引き下げも説く。

FRB資産圧縮についても積極的な姿勢だ。

タカ派的スタンスゆえ、ここは「低金利人間」を自認するトランプ氏とは一線を画するので、トランプ氏の反応が注目される。

総じて一連の発言は「歯に衣着せぬ率直な物言い」と言える。

大手投資銀行勤務という経歴があるので、市場の中では親近感が持たれる傾向がある。

但し市場が本音で望むのは、やはり「イエレン再任」であろう。しかしその可能性は低い。そこでFRB内で「中間派」のパウエルFRB理事も「イエレン代替候補」として有力視される。一時市場が望む最有力候補とされたコーン国家経済会議委員長は、トランプ氏の人種差別的発言に強い違和感を覚えたことをメディアに語ったため、不興を買い人選から外れたとされる。

市場は不透明性を嫌うので、イエレン・パウエル候補に安心感を持ち、大胆に発言するウォーシュ候補には一抹の不安感を抱く。特に今月開始予定のFRB資産圧縮は前例なき壮大な実験であり、イエレン氏が発表したプログラムが新議長により路線変更されるとマーケットにはショックが走る可能性がある。

仮に毎月の資産圧縮ペースが加速されれば、ドル金利急騰を招きドル高円安急進となる要因となろう。そもそもタカ派ゆえ、ウォーシュ氏が議長となれば、ドル高バイアスがかかりやすい市場環境となる。NY金には下げ要因。円建て金には上げ要因だ。

その他の人事を含め、全てはトランプ氏の胸中にある。トランプ色に染まるFRBの金融政策は現時点で見通すことはできない。年内に2018年利上げペースを予測することは難しい。イエレン氏がレームダック化してゆけば、12月FOMC声明文やFRB経済見通しであるドット・チャートも説得力に欠けることになろう。新体制となる来年3月のFOMC時点まで待たねばならない。

ドルそして株も、金融政策面から決定的な方向性は出にくい状況が続きそうだ。その間、様々な観測が市場には飛び交うので、短期的な価格変動は激しくなる可能性がある。ここは冷静に市場の潮流を見定める眼が必要であろう。

2017年