豊島逸夫の手帖

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トランプ氏とイエレン氏の狭間に揺れる市場

2017年1月19日


トランプ氏が日本株を揺さぶり、イエレン氏が日本株の救世主役に廻る。トランプ氏が金価格を上げ、イエレン氏が金価格を下げる。
偶然の巡り合わせとはいえ、興味深い。


トランプ氏のドル高牽制発言で円高が進行したところで、イエレン氏が講演で、ドル高材料を提供した。2019年までに政策金利が3%になるとの予測を語ったのだ。同氏の言い回しはこうだ。
「お集まりの多くの皆さんは、次の利上げがいつか、どこまで金利が上昇するか、大いに聞きたがっていることでしょう。私が申し上げられることは、私も同僚の多くも、毎年数回の利上げにより2019年末には3%に接近するであろうとの予測です。」
更に、冷静なイエレン氏も、トランプ氏の過激発言に影響されたのか、きつい表現も用いている。
「利上げを待ちすぎると、いずれ酷い(nasty)サプライズのリスクがあります。それは、強すぎるインフレ、金融不安、あるいは、その両方です。そうなった場合には、我々は急激な利上げを強いられ、経済は不況に陥るでしょう。」
Nastyという単語のニュアンスは強い。FRB議長が講演で用いる言葉とも思えない。利上げトークに慣れているマーケットにも、意外感があった。トランプ氏のFRB批判を意識してのことか、と勘繰りたくもなる。
そもそも、トランプ氏のドル高牽制発言の後に、普段より強い言い回しでドル高を誘発する発言をしたイエレン氏の言動には、中央銀行の独立性の主張が込められているのかもしれない。
日本株も金も、その両者の狭間で、変動している。


昨年までは、「FRBには逆らうな」と言われ、中央銀行主導型の相場形成の中で、イエレン氏と同僚たちの言動に市場の視線が集中した。しかし、今年からは、トランプ氏とイエレン氏の両者に目配りせねばならない。積極財政と金融正常化を目指す金融政策のポリシーミックスを映す相場展開である。

2017年