2017年2月1日
思わぬ脈絡から衝撃発言が飛び出すのがトランプ流だ。
薬品業界との会談で、「新薬認可をスピードアップして、認可に必要なコストも安くする。」と語ったことが、NY市場では、もっぱら材料視された。薬品会社株価が反騰したほどだ。
そこでの会話の過程で、日本にとっては見逃せない発言が出た。
中国と日本を同列に扱い、通貨安誘導を批判し、「(それを許容する)米国は愚か者の集団のようだ。」と語ったのだ。(日中は)市場をもてあそんでいる、とも述べている。今やお馴染みのやさしい英語を並べたトランプ節である。
日銀金融政策決定会合を報じる現地報道の見出しが「日銀、トランプ氏の保護主義傾向に懸念」とされたことも、トランプ氏を刺激した、との見方もある。
大統領が、他国の為替政策を批判することの重みを、この人は分かっているのだろうか、と首をかしげたくなる。
いずれにせよ、この発言で、日本が中国と同列に「為替操作国」扱いされる可能性が浮上した。
トランプ流の取引外交では、来たる2月10日の安倍首相との会談に向け、まずは相手を守勢に追い込む先制発言なのかもしれない。
既に、通商協定に為替条項を盛り込む方針だ。
通商問題と通貨問題をセットで論じ、米国として最大の恩恵を得ようとの目論みも透ける。
市場の視点では、ドル安政策といっても、米国は緩和から引き締めに動いており、介入で自然なマーケットの流れを食い止めることは難しい。
ただ、日本側で、日銀緩和のテーパリング議論が、対米を意識して、進行するかもしれない。テーパリングは、当局が、ほのめかすだけで市場には大きな影響をもたらす。
日銀による株式購入も、トランプ氏により、通貨安誘導のレッテルをはられるかもしれない。
このトランプ発言が、昨日の黒田総裁記者会見のとき分かっていたら、さぞや質問が殺到したことであろう。
当面の市場への影響だが、この発言で、ドル円のレンジが2円ほどは円高方向にシフトしそうだ。
昨日、トランプ政権の問題児ナバロ氏が、ドイツをやり玉にあげ、「著しく過小評価されているユーロを利用して、米国とEU諸国を搾取している。」と語ったことも、ドル安傾向に拍車をかけていた。
ナバロ氏は、激しい口調で語る。次に、日本を標的にする可能性には気をつけねばならない。
トランプ政権はロシアとドイツを同列に論じている。中国と日本も、米国の地方部では「アジア」の括りで語られることが多い。トランプ支持者も違和感をもたない可能性がある。
ドル高の米国経済へのデメリットはこれまでもいろいろ論じられてきたことだが、いよいよ日本の経済政策への飛び火が現実の問題となってきた。
その結果、ドル安で金は急反発。1200ドル台回復。想定内だね。