2017年6月15日
円相場はFOMC声明文発表前に、一時108円台にまで急伸していた。キッカケは5月の消費者物価上昇率が、横ばいの事前予測に対し、前月比0.1%低下となったこと。更に、5月小売売上高も横ばいの事前予測に対し、前月比0.3%下落となった。原油価格も44ドル台まで急落した。
かねてから不安視されていた「インフレ率停滞傾向」を裏付けるような数字ゆえ、市場には追加利上げペースが更に緩やかになるとの思惑が一気に拡大したのだ。
しかし、FOMCではインフレ率停滞は一時的との見解が再確認され、且つ、金利予測を示すドット・チャートは前回と変わらなかった。利上げ回数は年内あと1回、来年は3回との見方を維持したのだ。その時点で円相場は109円台半ばまで戻した。
それでも前日比では円高進行になる。
結局、市場はFRBの消費者物価見通しを楽観的と見て信じていないようだ。
短期政策金利はFRBが押し上げることが出来るが、長期金利は市場が押し下げる。長期的経済活性化に自信が持てず、10年債の利回りは利上げにも関わらず2.1%台に低迷している。10年債利回りと2年債利回りの格差は0.8%ほどに急速に縮小中である。イールドカーブのフラット化現象が進行している。
一方、ドル高効果のあるFRB保有資産縮小については、縮小ペースが極めて緩やかであることが具体的に数字で示された。そこまで開示することはサプライズであり、資産縮小によるドル高効果は限定的と市場では評価された。更に、発表されたペースでの資産圧縮であれば、実質的な過剰流動性相場は続くとの認識が市場では広まっている。
なお、記者会見でイエレン議長は「トランプ大統領との会話は無いが任期は全うする。」と語った。現在空席のFRB副議長、理事のポストについては明言を避けた。任命についてはトランプ大統領主導となるは不可避であろう。既に、FRB理事の具体的候補者として大学教授グッドフレンド氏の名前が「大統領検討中」としてマーケットには流れている。FRBは採用していないマイナス金利の支持者で、リーマンショック後のFRBに対して批判的な姿勢も見せた人物だ。FRBが徐々にトランプ色に染まってゆく過程を連想させる。そのトランプ大統領は「私は低金利を好む。」と明言している。今後の利上げ決定が「データ次第」ながらも「トランプ次第」となる可能性も無視できないだろう。特に大型減税・インフラ投資の財政政策の実現性は、金融政策に大きな影響を与える。
金価格は米小売統計、消費者物価発表の段階では1281ドルまで急騰したが、FOMC後は一時1256ドルまで急落。結局1260ドル台に戻った。やはりドル相場との相関が強い。
その外為市場では目先円高傾向だが、今年後半と来年に計4回の利上げをこなさねばならぬことを考慮すれば、ドル高・円安圧力が徐々に高まりそうだ。資産縮小も今後ペースが早まれば、市場の底流としてドル高バイアスも無視できない。
日本株にとっては円高という逆風が吹くが、一方で、流動性相場継続の中で世界のマネーが日本株にも回遊するシナリオも現実味をおびる。
今後の市場展望に多くのヒントを残したFOMCだったと言えよう。