豊島逸夫の手帖

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急転回、資産縮小7月開始の可能性も浮上

2017年7月6日

結局市場への影響としては、北朝鮮リスクより米金融政策の方が優った。

特に、昨晩6月FOMC議事録が発表され、NY市場関係者たちの目を引いた一節が、資産縮小開始時期に関する記述だ。

「資産縮小政策のタイミングについて、数人(several)は2~3か月以内(a couple of months)に開始を発表することを選好した。既にFOMCのコミュニケーションにより、そのような意向が伝えられ市場(public)でも準備されている。」

「しかし他の数名(some)は、年内遅くまで待つべきと強調した。経済状況とインフレ見通しを吟味するためには、まだ追加的時間が必要だからだ。」

「ほんの数名(a few)は、近い時点での資産縮小政策変更は金融正常化が緩やかではない、と誤った理解をされるかもしれないことを示唆した。」

この文面から読み取れることは、早ければ7月25~26日に開催されるFOMCにでも、資産縮小開始が発表される可能性があることだ。

市場にしてみれば「そのような意向が伝えられ準備した」という覚えはない。全く織り込まれていないシナリオである。せいぜい早くとも9月資産縮小開始、利上げは一回休み、12月に利上げ、という見通しが出始めた段階である。

数名でもそのような意見を述べたとあらば、市場はこれからその可能性について切迫感を持って吟味せねばならない。イエレン議長の議会証言や地区連銀総裁講演、そして雇用統計などからその手掛かりを探ることになろう。

一方、資産縮小と利上げの同月実施に関しては、オーバーキル(締めすぎ)のリスクが意識されている。年内利上げの回数が想定より増える可能性は低い。

それでもCMEのフェド・ウォッチによれば、9月利上げの確率は18%、12月利上げの確率は50%である。つまり、市場は年内利上げ時期についても、まだ充分に織り込んだとはとても言い難い状況だ。

6月利上げ確率が、6月FOMC直前には9割に達したことを思えば、今後利上げが固まってゆく過程では相当なドル高(円安)進行が予想される。

なお、6月FOMCでは資産価格上昇リスクについても様々な懸念が論じられた。NY株価が割高との懸念は、例えばウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁が、株価はon fumes(ガス欠でも気化ガスで車が走っているような状況)に例えて語ったことが市場で物議を醸した。株式市場は、イエレン議長、フィッシャー副議長も、資産価格上昇リスクに警鐘を鳴らすがごとき発言にも敏感になっている。いずれも6月FOMC後の発言ゆえ一貫性が感じられる。

8月下旬のジャクソンホール中央銀行会議まで夏休みを挟み水入りかと思われた米金融政策を巡る議論は、夏休み前にも急転回を迎える可能性が浮上してきた。

金価格は1220ドル台で変わらず。地政学的リスクは一時的と書いたが、実際は殆ど反応しなかった。本当に軍事介入とならない限り市場への影響は限定的。

今日の写真は、まずサザエのイタリアン風。そして富士赤豚のグリル。脂身が上質なので、しつこくなく旨い。こういう脂身は「白身」とも呼ばれる。そしてイチゴのメレンゲ風グラッセ。

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2017年