2017年12月13日
今週は欧米市場もビットコイン関連のトピックスで持ちきり。昨日は2014年に破綻した日本の仮想通貨取引所「マウントゴックス」が今や保有ビットコインを売却すると、債権者に全額返済しても2千億円は軽く超える巨額の含み益を抱えることが話題になった。破綻時からビットコイン価格は40倍程度急騰しているからだ。しかもこの利益はマウントゴックス社の親会社の大株主で業務上横領の罪に問われているカルプレス被告に分配されることになる。これに反発した債権者側には、破産から民事再生への手続変更を東京地裁に申し立てる動きも見られる。民事再生ならビットコインで返還されることが可能だからだ。
前例のない展開ゆえ、唖然とした市場では「ブラックジョークか。」との呟きさえ聞こえてくる。
ビットコインの先物価格とスポット価格の乖離がかなりのプレミアムになっていることも注目されている。原油市場などでは専門用語でコンタンゴと呼ばれる状態だ。コンタンゴが大きくなれば市場の過熱が意識され、裁定取引で売りを入れる投機筋も増えることが予想される。ヘッジファンドも単なるビットコイン価格の上げか下げかの丁半バクチはやりたがらない。それより現先スプレッド=コンタンゴの裁定取引に関心を示す。但し、現状では複数の取引所が乱立気味なのでベンチマークとなるスポット価格が定まらない。そこで市場インフラを固めるために規制を明確にしなければならない。当面ビットコインの先物取引は米国商品先物取引委員会(CFTC)の管轄となっているが、証券取引委員会(SEC)も傍観できない。ビットコインは実体がないので「コモディティー=商品」とは言い難い。ETFが組成されれば有価証券ゆえSECの管轄となる。現在は導入・過渡期ゆえ「省際問題」がくすぶる。CFTCは既に相場過熱時にサーキットブレーカーを導入して実行しているが、それでは投資家を守ることは不十分と警告を発している。対して、SECはビットコインを利用したクラウドファンディング(ICO)に目を光らせている。
そもそも、ビットコイン先物価格が大幅なコンタンゴになっているのは売り手不在との解釈も根強い。もともと商品先物はシカゴ近辺の農家が収穫時の販売価格を予め決めて経営安定化を図るというヘッジ行為のニーズから派生した。然るに、ビットコイン先物市場の売りは現状で初期購入者の利益確定売りに限定される。そこで中堅先物ブローカーの中にはビットコイン先物売り注文も受け付けるとの動きも見られる。但し、相場格言で「売りは青天井」と言われる如く売りから発生する損失額は無限だ。そこで売り注文に関しては証拠金を通常の5倍程度に設定するようだ。
市場関係者・投資家、そして当局の手さぐりの対応が連日新たな動きを誘発する展開になっている。
かくして、金がビットコイン騒動で霞む。じり安。今朝の日経マーケット面でも筆者のコメントが引用されているが、昨日書いた如くあくまで先物売買の話だからね。字数限定の新聞記事では全貌が伝えきれない。
なお、今日は日本時間日中にアラバマショックがあるかも。アラバマ州の上院補選結果が判明するのは昼頃。セクハラ疑惑の共和党上院議員が落選すると上院共和党51議席対民主党49議席となりトランプ政権運営に暗雲。
そして、明朝にはFOMC声明とイエレンさんの記者会見。もうレームダックで利上げも既に織り込まれているので、アラバマのほうがサプライズ性はあるかな。