豊島逸夫の手帖

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元商品トレーダーにFRB議長が務まるか

2017年7月26日

トランプ大統領が市場注目のFRB議長人事に言及した。ウォールストリートジャーナル紙のインタビューで「イエレン議長とコーン国家経済会議委員長」の二人の名前を挙げ、かつ「他に2~3人」と語った。

イエレン氏については「よくやってくれた。尊敬している。私は低金利を好む。イエレン氏は低金利人間だ。」、「再任の可能性が確実にある。」と語った。

一方、コーン氏については「確実に候補者の中にいる。」、「政権内での働きぶりに尊敬の念を抱く。」と述べている。

通常、FRB議長人事は8月頃に「内示」があるのだが、インタビューでは「年末に発表する。」としている。

市場内は既にコーン氏有利との見方が優勢だ。

米国CNBCが市場関係者対象に調査したところ、コーン氏予想が6月20%から7月50%にまで急上昇している。対抗馬でトランプ大統領が「その他2~3名」とした中のウォルシュ氏は24%で、テイラー氏が9%で下落傾向が顕著だ。

但し、市場内のコーン氏の評価は分かれる。

NYMEXの場立ち出身なのでエコノミストではないことを懸念する声も目立つ。「元商品トレーダーをFRBトップに据えるなど、ギャンブル依存症の人間にカジノ運営を任せるようなもの。」との辛口評さえ聞こえてくる。ムニューチン財務長官とFRB議長が両方ともゴールドマンサックス出身であることは議会の承認プロセスで問題視されよう。マネジメント・スタイルも業界内では強引に突っ走る傾向があるとされ、FOMC内でのまとめ役として適任かとの意見もある。

とは言え、トランプ政権内では最も「まともな」人材とも言われる。パリ協定脱退の際にはクシュナー大統領上級顧問と並び異論を唱えた。これは民主党出身の痕跡かもしれない。

実は、コーン氏自身が政権内で次期FRB議長選定チームのリーダー格であった、という事情もある。それだけ信任が厚いという証しであろう。それゆえ、インタビューにも同席していた。その場で「彼(=コーン氏)は知らないと思うが、彼は候補者だ。今の仕事が気に入っているようだが。」と思わせぶりな物言いで語ったのだ。

本日はFOMC声明文発表の日だが、人事にも市場の重大な関心が集まることになった。

2017年