豊島逸夫の手帖

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原油大荒れ、全市場を揺らす

2017年6月27日


原油価格が安値圏43ドル台攻防を演じて、株外為債券商品市場で最大の要因となっています。
ご存知のように私は一貫して原油弱気論者です。
その理由は、
1) OPEC参加国の「申告」生産量が正確な数字か否か疑念がつきまとう。
2) スンニ派(サウジ)とシーア派(イラン)が協調することなどあり得ない。OPECの団結には限界がある。イランは経済制裁で原油輸出ができなかったので、現在は増産も大目に見られている。しかし、これは暫定措置だ。
3) 生産国減産協定といっても、肝心の米国の参加が抜けている。その米国シェールは40ドル以上なら御の字で生産を続ける。



そもそも、掘ればいくらでも噴出してくれる液体燃料(金は固体)の生産量を「談合」で生産調整することにより、必死に価格を支えている構図に無理がある(なぜ、国と国だと談合が認められるのかがよく分からない)。


それから、サウジのムハンマド新皇太子は31歳で国防、外交、経済、そして石油産業をも支配することになり「危険な権力集中」といわれる。その新皇太子は石油への全面依存を絶ち、非石油収入を倍増する構想「ビジョン2030」を標榜する。将来的に原油の価値は下がることを見越して、例えば政府系ファンドからの収入を増やそうという訳だ。国営石油会社サウジアラムコの株式の5%程度を公開する計画も、トレーダーの視点では巨額の埋蔵量という「原油買いポジション」を売り抜ける目論みとも解釈できる。
なお、原油が下がると株価が下がり、リスクオフとなることで金が買われる。一方、CRB指数など商品指数が売られると原油と金が同時に下がる局面もある。
更に、原油が下がるとFRBの利上げ決定に関して重要な指標であるインフレ指数が上がりにくくなり、2%というインフレ目標達成が益々難しくなる。利上げ先送り→ドル安円高という図式となる可能性を秘める。

金価格は上げ下げ要因に振られ1230ドル台から1270ドル台のレンジで大荒れ。薄商いで早くも夏休みモードだね。


今日の写真。
ワタリガニ丸一匹を使った濃厚なパスタ。でかい白アスパラ(今年は極端なアスパラ不作)。そしてデザート。


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2017年