豊島逸夫の手帖

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北朝鮮緊迫、なぜ当事国通貨「円」が買われるのか

2017年8月10日

北朝鮮情勢が一気に緊迫してマーケットはリスクオフ・モードに入った。そこで安全通貨としてなぜ円が買われるのか。

まず、今回円買いに動いたのは、ヘッジファンドの中でもCTA(コモディティー・トレーディング・アドバイザー)と呼ばれる超短期投機筋である。高頻度売買を繰り返し、売買差益を追求する。彼らのコンピューター・プログラムには「リスクオフなら円買い」とインプットされている。デイ・トレード(日計り売買)も多く、昨晩のNY時間では既に一部で利益確定の円売りさえ見られ、110円台回復の局面もあった。一方、同じヘッジファンドでも中期的世界経済・政治情勢を読んで売買するグローバル・マクロ系は、北朝鮮情勢の今後の展開が全く不透明ゆえ、殆ど動いていない。運用担当ヘッドも夏休み中である。

次に「安全通貨」として昨日最も買われたのはスイスフランだ。米国も日本も当事国ゆえ、消去法で欧州の安全通貨に買いが集中した。

更に、今回円が買われている理由として、北朝鮮リスクがFRBの金融政策に与える影響も無視できない。仮にマーケットが今後リスクオフを強めれば、FOMCとしても資産圧縮・利上げの「金融正常化」に慎重に成らざるを得ないという見方だ。そもそもFRBのハト派的スタンスから生じたドル安の流れを引き継いだ動きとも読める。

最後に、マーケットは米朝軍事衝突シナリオの実現性を信じてはいない。韓国には多数の米国人居住者もいる。北朝鮮にも破壊的影響をもたらす。まず現実性は薄いシナリオだが、それでもトランプ大統領や北朝鮮国営通信の激しいレトリック(語り口)を聞かされると「気持ち悪い=not comfortable」ゆえ、取りあえずマネーを逃避させる。日本が実際にミサイル攻撃の標的になる可能性は極めて低いので、スイスフランや金・米国債と並び「円」も一つの選択肢として買われるわけだ。

それゆえ、もし万が一軍事介入に発展すれば「円売り」に即転換と身構えている。著名投資家ジム・ロジャーズ氏も、北朝鮮情勢悪化でまずは円高だが、本当の「半島有事」となれば円売りだと語る。

総じて、リスクオフの円高は短命だが、金融政策に由来する日米金利差縮小による円高傾向はまだ続きそうである。

金価格は有事の金買いで1280ドルまで急騰。乱高下している。「有事の円高」同様に有事の金買いは短命だ。但し、今回の北朝鮮情勢にはただならぬ雰囲気があるので、いつもより長続きする可能性はある。北朝鮮問題も新次元に入ったようだ。

なお、来週の月火水のお盆期間中私は働いていますが、ブログは事務局が休みなのでアップできません。その間はツイッタ@jefftoshimaでも覗いてください()

2017年