2017年3月21日
<金価格は上昇の兆し>
豊島
金についての対談といわれても、何を話せばいいのか戸惑うでしょう? 特に日本では、女性でも華やかさより落ち着いた輝きのジュエリーを好む人が多いので、星野さんも金には普段あまり縁がないのではありませんか。
星野
私は結婚指輪が金なんです。主人が好きなブランドでお互いに買って贈り合って。でもその後、同じリングの値段が上がっているのを見て、金の価格というのは本当に変わるんだと実感しました。
豊島
金の年間生産量はおおよそ3千トンで、宝飾需要は約2千トンです。ジュエリーにも流行があり、経済が停滞している時期には金はそれほど好まれません。しかし現在は、長い低迷期を抜けて明るい兆しが見え始めた国や地域が多いので、こうなると金の需要が増え、価格は上がっていく可能性が高いですね。
星野
金の価格が流行に左右されるというのは、意外ですけど少し身近に感じます。
豊島
生活のなかに金が深く溶け込んでいる場所では、私たちには想像もつかないような文化があります。たとえばドバイには世界最大の金のスーク(市場)があり、通りの右も左も見渡す限りゴールドショップ、という光景が広がっています。中東では、肌を人目にさらさないように全身を覆った服装の女性が多いですが、あの黒ずくめの衣装の下には金のアクセサリーがいっぱい、という人もいるんです。他人に見せることはできなくても、身につけていると満足感があるようですね。
<変わらぬ価値と信頼性>
星野
面白い。そういえば、中国の人はギフトに金を選ぶことが多いと聞いたことがあります。
豊島
そうですね。世界最大の金の需要国である中国では、男性でも金の指輪やブレスレットを着けている人が珍しくありません。その一方で、北京などの都市部では若い女性でも資産として金の地金を買う人が増えています。私も現地を視察して驚きました。
星野
その女性たちは地金を自宅に持っているんですか。
豊島
そのようです。話を聞くと「銀行に預けておくよりずっと安心だから。」という。日本では預貯金こそ一番安心と考える人が多いので、この感覚の差は面白いですね。成人した子どもが実家への仕送りに金の指輪を送るということもあるようです。
星野
どうして金にはそれほど信頼性があるんですか。
豊島
ひと言でいえば「価値が残る」というのが最大の理由です。熱や腐食に強いため、火事や災害でも金だけは無事だったという例が多くありますし、ツタンカーメンのひつぎは3千年前から変わらぬ輝きを放っています。もちろんジュエリーとしての人気は根強くハイテク機器の製造にも金は欠かせません。
星野
金が欲しい人は決していなくならないし、保有していればずっと価値を保ってくれるということですね。
豊島
そうです。その一方で、まだ採掘されていない地球上の金の大半は海底にあるため、これを利用することは不可能に近い。需要は旺盛で供給には限りがあるという図式は将来も変わらないので、短期的な価格の上下はあっても金の価値が長期にわたり暴落することはまずあり得ないといえます。
<時間を味方に将来に備える>
星野
でも金って、怖いというか、ちょっと身構えるところがあるのも事実です。
豊島
わかります。私も自分のセミナーの参加者から「金の専門家というのはもっと怪しい人かと思っていました。」と言われたことがありますから(笑)。
星野
たしかに、もしドラマで豊島先生のキャラクターをわかりやすく描くとしたら、金をじゃらじゃらぶら下げた怪しい人になるかもしれません(笑)。
豊島
しかし説明を聞くとみなさん一様に安心して、資産の選択肢として検討する価値があることを理解してくださる。たしかに金をめぐっては、楽に儲かると謳った真偽不明の投資の勧誘などがあるのも事実です。しかし今の人たち、特に若い人は非常にクレバーなので、もうけ話ほど疑ってかかるようなところがあります。その点では本当に感心します。
星野
私もそうですね。儲かるなんて聞くと逆に怖いと思ってしまう。豊島先生のセミナーには、そんなに若い人も参加するんですか?
豊島
20代、30代の人たちが多いですよ。男性もいますが、特に女性が熱心ですね。まだ若い彼女たちが「老後のために参加した。」というので初めは驚きましたが、自分たちには老後までまだ時間があるから、その強みを生かして少しでも将来に備えたいという。その点でも本当にクレバーに考えているんです。最近は星野さんと同年代ぐらいの娘と母親という参加者も増えています。
<金は人の思いをつなぐ>
星野
家族でも普段お金の話はあまりしないですからね。本当はそれじゃいけないんですけど。
豊島
特に相続の話題など、子どもの側からは切り出しにくいものですからね。でも私のセミナーを聞いたあと、親子で初めて話し合ったという人もいます。金は分割がしやすく、いつでも売却が可能で固定資産税もかからないなど、相続財産としてもメリットが多いんです。
星野
買う時には消費税がかかりますよね?
豊島
それはありますが、貴金属店などに買い取りを依頼した時は、消費税を含めた金額を受け取ることができます。
星野
これまで私は自分が金を持つなんて考えたこともありませんでしたが、今日のお話をうかがって金融資産を持つなら金がいいと思い始めています。
豊島
日本人は円に絶対的な信頼を置いていますが、私たちプロから見れば、円だけを持つことも、株やドルだけを持つのと同じようにリスクのある行為です。金は安く買ってすぐに売って儲けるようなものではないので、初めての人が持つ資産としてもおすすめできます。実際、子どもや孫に資産をどう残すかと考えた時、初めて金の購入を考えたという人も少なくありません。
星野
金は人の思いをつなぐものなんですね。だからこそ、家族のつながりの中心にいることが多い母親や娘が関心を持つのかもしれません。私も母親になってから将来のことを具体的に考えるようになったので、その感覚はわかる気がします。
豊島
不思議なもので、たとえば通帳の数字より金貨というかたちで受け取ると、贈った人の思いがより深く伝わる気がします。あの温かい色合いには、そんな目に見えない力があるのかもしれません。金についての新しい見方を私も教えられた気がします。