豊島逸夫の手帖

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日銀を信じられない人たちが金を買う

2017年7月20日


黒田総裁は、物価上昇率2%達成の目標を約一年延ばし、2019年度中頃に先送りしました。先送りは2013年4月に異次元緩和を始めて以来、実に6回目になります。要は、日銀は経済情勢を見誤り続けているのですよね。これだけ外しまくると黒田総裁が何を言ってもオオカミ少年扱いになるでしょう。言い訳としては原油価格が下がったということで、「外的要因」だから日銀としては如何ともし難いと開き直った感じです。


しかし、このまま2019年度まで(場合によっては更に先送りされて東京オリンピック開催の2020年までとなるかも)質的量的緩和を続けるにしても、もはや買える国債の量が限られています。日銀が買ってくれることを前提にむやみに新規国債発行を増やし、国の借金を増やすことも躊躇われます。そこで日銀保有国債を「永久債」にする案も論じられます。永久債とは返済期日なしで国にお金を貸すようなもので、かなりの劇薬です。最も現実的な手段は日銀による外債購入ですが、これは日銀のドル買い円売りになるので、トランプ政権から為替介入と見做される可能性があります。更に日銀の株購入を年間6兆円から10兆円に増やすなどの案もあります。ただ日銀が巨大株主になるというのも、保有した株をどう処分するのかということを考えると、やはり劇薬ですね。そもそも今の株式市場は日銀依存症が顕著になってしまいました。午後2時半以降になると、そろそろ日銀が買い出動するのではなどと市場では囁かれます。


かくして日銀が信じられなくなった人たちが、金を買う傾向があります。「円はその気になればいくらでも刷れるが金は刷れない」からです。


そもそも私の周辺でも日銀OBたちが、退官して退職金の運用を始めるや「円」を持ちたがらず金とかドルを買いたがることは、これまでもお話ししてきました。


「通貨の番人」を40年以上務めてきた人たちが真面目な顔で「円はやばい。私はその現場にいた。」と語ると背筋がひんやりします。そのうえで、こともあろうに(笑)この私に向かって「これからは金の時代だ。」などと言われると「あんたに言われたくない。」と思いますね(笑)。


なんというか金の世界にいると人間の欲望の生々しさを見せつけられることが多いのですよ。


さて、生々しい話の後のお口直し?に、我が家のネコちゃんの写真を。猛暑で参ったという感じです。


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最後に日銀の量的緩和の軌跡を示すグラフです。


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2017年