豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. FRB高官、唐突な3月利上げコーラス、なぜ?
Page2265

FRB高官、唐突な3月利上げコーラス、なぜ?

2017年3月3日

いかにも唐突な感じが否めない。3月利上げ無しと、市場のコンセンサスは固まっていた。そこに、突然、地区連銀総裁の3月利上げコーラスが始まった。その間、米国のマクロ指標は、確かに改善傾向であったが、マーケットの利上げ観測を転換させるほどのインパクトは感じられなかった。トランプ大統領が、無難に初の議会演説を切り抜けたことも、不安要因除去には資するが、そもそも財政政策の不透明性が薄れたわけではない。議会演説で具体的な説明がなかったので、逆に、不透明感は増したとも思える。

結局、このコーラスは、FRBの新たな変形「フォワード・ガイダンス」ではないか。FOMC参加者が、そろい踏みで発言して、金融政策の方向性を明示する。イエレン議長の最大の懸念は、利上げが「後手後手に回り、あとで、慌てて連続利上げを強いられる」ことだ。失業率4.7%の完全雇用に近い経済に、1兆ドルのインフラ投資と大幅減税を処方すれば、どうなるか。しかも、労働力に組み込まれている移民への制約が強まるは必至だ。賃金インフレの可能性は強まるだろう。そこで、トランプ財政政策の機先を制して、3月にブレーキをかけておく。トランプ大統領のFRBへの政治介入、或いは、トランプ派の新FOMCメンバーが送りこまれることは必至ゆえ、敢えて、FRBの独立性を主張した行動とも読める。

市場は、既に7割以上の確率で3月利上げの織り込みを始めた。その確率は8割、9割を加速しそうな様相だ。今晩のイエレン議長、フィッシャー副議長の講演が、利上げコーラスのフィナーレとなりそうだ。来週に入ると、FRB関係者がFOMC前に公的発言を禁じられるブラックアウト期間に入る。ここは市場が疑心暗鬼に陥りやすいので、ヘッジファンドにとって、草刈り場となりやすい。外為市場で抵抗線とされる115円を、ヘッジファンドのパワープレーで突破すれば、そこに新たなレンジが醸成される。四の五のと後講釈を語ったところで、市場は、新たなレンジを既成事実として受け入れねばならない。これが理屈を超えた相場の力学である。

そうなれば、日本株の上昇も加速しよう。

来週の一週間は暗中模索。要注意である。

金価格は利上げを控え、予想通り、下落。1220~30ドル台。

フランス・オランダの選挙というリスクが控えるので、下がっても底は浅い。

2017年