豊島逸夫の手帖

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FBI長官突然解任、危ういFBIとFRBの政治的独立性

2017年5月10日

誰もが全く予期していなかった展開が全米を震撼させている。

日本時間今朝、トランプ大統領は「セッションズ司法長官の意見書に従い、本日付けでコミーFBI長官を更迭する。」と発表した。

トランプ政権とロシアの関係を調査中のFBIトップを罷免とは「土曜夜の虐殺」を連想させる。1973年、ニクソン大統領がウォーターゲート事件を捜査中の特別検察官を更迭した事件が、この刺激的ネーミングで歴史に残る。ニクソン大統領へは、その後数々の弾劾法案が提出され「私はペテン師ではない I am not a crook.」という有名な言葉が、これまた歴史に語り継がれることになる。

FBIのトップをこのように更迭するようだと、FRBのトップを更迭するという選挙期間中の発言にも現実味が増す。「私は低金利を好む。」と発言した大統領が、利上げを進めるFRB議長を罷免することも絵空事では片付けられまい。政治的に独立であるべき機関にトランプ色に染まったトップが任命されることになるのか。

なお、皮肉なことはコミーFBI長官が大統領選挙終盤に新たなクリントン氏のEメールを公開して、結果的にトランプ氏が有利になったとの見方もあることだ。且つ、その発表のタイミングが適切でなかったとコミーFBI長官は最近認めている。そして、今朝の突然の解任劇となった。

ほくそ笑むプーチン大統領を想像してしまう。

NY市場も大引け後の「爆弾発表」の話題で持ちきり。帰りかけていたスタッフがテレビ中継を見守っている。有事相場から利上げ相場に移行中の時期ゆえ、中期的に米国金融政策にも影響を与えかねない要因に対する関心は高い。

相変わらず予見不可能な大統領に振られるマーケットである。

なお、今朝の日経朝刊商品面に「金の値下がり鮮明、米利上げ期待/政治リスク後退」という大ぶりの記事が出ています。私のコメントは「これまで高値を支えた有事相場はピークを過ぎた」。有事相場から利上げ相場へ転換。基本的に年内は利上げ2~3回あるので金は下げ基調になりそう。

2017年