豊島逸夫の手帖

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神鋼ショック拡がる

2017年10月11日

神戸製鋼の鉄・アルミ製品品質偽装事件は欧米でも「またもや日本企業のスキャンダル」として話題になってしまいました。衆議院議員選挙は殆ど注目されていないことと対照的です(そもそもアベノミクスへの期待感が萎えているので選挙への期待度も低い)。

特にアルミは軽量な金属として品質改良も進み、需要分野が拡大しつつある成長部門なので影響は大きいですね。

私が最も心配しているのは、日本企業全体が「被告席」に立たされ、自社製品の品質管理に落ち度はないのか改めて確認を迫られていることです。

「Kobe Steelが問題になっているが、Kobe Beef=神戸牛は大丈夫なのか。」とさえ聞かれてしまいましたよ。風評被害も大きいですが、日本企業が抱え込んできた悪しき習慣が明るみに出たことはショックです。

日本企業内では依然「赤信号、皆で渡れば怖くない」という心理が厳然と残っているのですね。

外資系企業から日本企業に移籍した知り合いが「カルチャーショック」だと驚いていました。例えば専務や常務が出席する社内会合では、参加者の社員たちは必ず30分前までに全員が着席して上司の到着を待たなければならない。もし体調不良などで欠席の社員がいれば、その席には必ず誰かが座って「全員出席」のカタチにしなければならない。こう書くと、それってうちの会社のこと?と思う読者も少なくないかも。

とにかく例えば専務には絶対服従。NOとは言えない。

このような実態にしばしば遭遇するので「昔と全く変わっていないな」と思ってしまいますよ。

神鋼スキャンダルも氷山の一角とすれば、アベノミクスとか囃す前に日本の企業風土を変えなければ話にならないでしょう。

実は以前某日系通信社20周年記念の祝賀講演会で、そのような発言をしたことがあるのですが(神鋼ショックよりずっと前のことです)、その時の場内の雰囲気が「この人、何を言っているのだろう」という怪訝な感じだったことを思い出しました。今だったら参加者の多くが、そのとおり!と膝を叩くでしょうね。

選挙期間中で今後の日本が論じられる機会が多いだけに、そもそも日本企業が抱える根源的体質がこのように露わになると、議論そのものの前提が問われ虚しくなってしまいます。

2017年