豊島逸夫の手帖

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中国、習近平一強体制

2017年10月26日

注目の5年に一度の共産党大会で、習近平指導体制が強化された。「毛沢東」思想学習と同じように「習近平思想」が礼賛され、権力集中が進む。

経済面では更なる締め付けが懸念される。

人民元は自由化を前提にIMFからドル・ユーロ・円・ポンドに次ぐ第五の「SDR構成通貨」=国際通貨のお墨付きを得た。しかし、人民元が安過ぎれば、大量の資本流出・外貨準備減少を招く。人民元が高過ぎれば、中国製品の国際競争力が弱まる。そこで結局、実質的には人民元変動を制限する「人民元管理相場」に戻りつつあるのが実情だ。毎日の人民元レート設定に恣意的な変数を導入して、中国人民銀行が管理しやすくなっているのだ。力で相場変動を抑え込む戦略である。そもそも中国人民銀行に政治的独立性などあり得ない。国務院の指示のもとに動く、優秀なテクノクラート集団だ。

その中国人民銀行が、長期的に公的金準備を増やしている。中国の外貨準備としての金保有量は1700トン台まで増えてきている。21世紀に入った時点では400トンほどであった。直近では、金購入ペースが鎮静化しているが、長期的には中国人民銀行の金購入が増加傾向にあることは間違いない。筆者は今後10年で中国の公的金保有が5000トンになると予測している。それでも総外貨準備の10%にも満たない。とは言え、世界の年間金生産量が3000トンのオーダーだから市場には大きな影響がある。

そもそも中国の金購入は、通貨政策と資源政策の二つの意味を持つ。

外貨準備の7割が米ドルに集中しているので通貨分散の必要があること。そこで無国籍通貨=ナショナリズムの匂いが無い金は中国にとって「好都合」である。
更に、金はスマホなどハイテクには欠かせない素材ゆえ、国家的に希少資源として金を備蓄する発想がある。そこで個人の金売買を自由化して中国国民の金現物保有を促進することで、中国国内に実質的に金ストックを「備蓄」してゆく戦略なのだ。

今後も、中国公的部門の動きから目が離せない。

2017年