豊島逸夫の手帖

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過度のコンプラはイノベーションの芽を摘む

2017年7月28日


COOとCO2は削減対象、と私はよく言うのですが、今、組織の中でCEOでも一目置かざるを得ないのがチーフ・コンプライアンス・オフィサー。社内規定順守に目を光らせる存在。
たしかに、社内規律を徹底することは重要ですが、日本の場合それが行き過ぎて、イノベーションの気風を削ぐ結果になる事例が目立ちます。私も外部の人間として気を使うことがしばしばです。
例えば、若い後輩に気楽な気持ちで「メシでも食おうか。」と誘うことが相手には迷惑になることがあります。外部の人間との会食は逐次上司に報告せねばならず、思わぬ勘繰りもされかねないからです。
社内でも社員が外部のレストランなどに集まると何かと目立つから、人事異動の歓送迎会も敢えて「山手線の外」の小さなレストランを貸切りで行うというケースもあります。


それから、これは某経済官庁での体験なのですが、廊下で知り合いの官僚に遭遇したので、やぁ、と近づき立ち話と思ったら、視線を外してそそくさと立ち去るのです。その直後メールが入り「すみません。庁内で外部の人間と話しているところを目撃されると何を言われるか分からないもので。まことに失礼しました。」こっちは唖然としましたね。
会社での仕事に関しても、イノベーションということで何か新たなプロジェクトを立ち上げるとき、必ず「社内リスク」を伴いますから、周囲の目を憚って「いかがなものか」などと尻込みする傾向もあります。
そのような社風の企業では、経営陣のキャラクターに一定の共通項があります。昔ながらの「猛烈社員型」が減り、私流の表現を使えば「好かれる三男坊タイプ」が増えています。ライバル社員がイノベーションに挑戦してコンプライアンスに抵触した結果、出世競争から脱落してゆく。人事評価でマイナスポイントが少ない社員が残る「減点パパ」型になると、減点が最も少ないタイプは、人当たりが良くルールだけはきっちり守る人材が生き残るのですね。ルールを順守して、部下に落ち度があれば冷ややかに×をつけます。だから部下は戦々恐々。外から見るとナイスガイなのだけれど、社内では何を考えているか分からない上司となります。
ある後輩から「うちの専務と会食してくれ。」と頼まれたことがあります。義理もない相手で、なんで私が?と思ったのですが、食いしん坊の私の弱点(笑)を突いて「あのお気に入りレストランをセットしましたから。」と言うので付き合いました。会ってみれば、それは良い人ですっかり意気投合しては話が弾みました。そして翌朝。朝一でその後輩から電話で「これからそちらに行ってもいいですか?」それから起こったことは、なんと言うか事情聴取みたいなもので、前の晩に専務と話したことを根掘り葉掘り聞いてくる。要は専務の本音を探って、なにか手掛かりを求めているわけです。人事異動も近く、ソワソワ気になってしょうがない、という感じでした。


アベノミクスもいいけど、こういう企業風土を変えてゆかないと日本経済再生は難しいのでは、と思った次第。


最後に明日土曜日、朝日放送「正義のミカタ」に出ます。テーマは「おカネ=円を疑え」。日本人くらい自国通貨=円に疑いを持たず安心感を持つ国民は珍しい。金、ビットコイン、円などを比較してみます。

2017年