豊島逸夫の手帖

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試される「安全資産」の実力

2017年4月10日

日本時間7日日中にシリア空爆の第一報が入ってから、米雇用統計、米中フロリダ会談とビッグイベントにマーケットは揺れた。更に、週末にはスウェーデン・エジプトでテロが勃発した。

有事の円高、地政学的リスクで日本株安に振れるかと思いきや、円安、株高になっている。

円相場はシリア空爆直後に瞬間的に110.10~20台まで円高が急進行したものの、米雇用統計発表後にドル高・円安に転じ、111円台を回復している。雇用統計は非農業部門新規雇用者数こそ予想を大幅に下回ったが、失業率・平均時給の改善傾向が評価された。そして、良い雇用統計は6月利上げには追い風となる。

結果的には、地政学的リスクより米金融政策のほうが、市場変動要因として勝ったことになった。

そもそも、有事の円買いは一過性で終わることが多いが、米金融政策の市場への効果は持続性がある。

なお、債券市場でも「安全資産」とされる米国債が売られ、10年債利回りは2.3%台前半から同後半まで上昇傾向だ。

金も「安全資産」として買われ、一時は1270ドルを瞬間的に突破したが、雇用統計後のドル高でみるみる値を消し、結局1250ドル台前半まで急落した。

結果的には、シリア空爆というショッキングなイベント勃発でも、米国債・円・金いずれも売られ「安全資産神話」が崩れた感がある。

もちろん今後、地政学的リスクが悪化すれば、さすがにマネーは安全性を求めて逃避するかもしれない。具体的ケースとしては、北朝鮮への米軍事介入、シリア上空での米露偶発的衝突などが想定される。

果たして「プーチン大統領の友人」とされるティラーソン国務長官のロシア訪問で、なんらかの妥協の糸口がつかめるか。

そもそも、トランプ大統領が「自分は柔軟な人間」と語りつつ、孤立主義から一転、中東へ介入し始めたことも、やはり「予見不可能」との不安感を強める。

北朝鮮に関しては、中国の積極的関与が期待薄だ。

マーケットは地政学的リスクへの耐性をつけてきたが、やはり今後「安全資産」の本当の実力が試される局面が来る可能性も覚悟せねばなるまい。

2017年