豊島逸夫の手帖

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FRBはレームダック化、日銀への注目高まる

2017年12月14日

昨晩は今年最後のビッグイベント。12月FOMC。

このトピックは専門的な話になるので、興味のない人はスキップして結構(笑)。

さて、イエレン議長任期中最後となる記者会見中、一回だけ会場が爆笑するシーンがあった。

「イエレンさん、この4年間私たちウォール街の人間がずっと聞いてみたかったことがあります。議長へ最後の質問として伺いたい。ドッド・チャートの中であなたのドットはどれだったのですか?」

3か月に一度FOMC後に声明文と同時発表されるFRB経済見通しの中の、参加者の将来に渡る金利見通しの分布をドットで表わすチャートの中でイエレン議長のドットはどれなのか。その度にウォール街は当てっこに走ったものだ。

それほどにイエレン議長は筋金入りのエコノミストとして認識されていた。

然るに、後任に指名されたパウエル氏はエコノミストではない実務派だ。任命してくれたトランプ大統領の意向も配慮しつつ、FOMC内の意見まとめ役として動くと見られる。市場でもパウエル氏のドットはどれかとの観測への興味は薄れよう。

昨晩のFOMC声明で筆者が注目したのは利上げ反対が2名いたことだ。ミネアポリス連銀カシュカリ総裁とシカゴ連銀エバンス総裁である。この2人のハト派は来年のFOMCで投票権をもたない。代わって投票権を持つのがクリーブランド連銀メスター総裁とサンフランシスコ連銀ウィリアムズ総裁だ。この両名はややタカ派、少なくともカシュカリとエバンスよりはタカ派と見られている。

更に、まだFRB副議長・理事職に空席が残るが、総じて大幅入れ替えになることは間違いない。既に理事の1人にはグッドフレンド氏が任命された。(同氏の考えについては、本欄11月30日付け「新FRB体制、タカ派ドル高志向の兆し」を参照されたい。)

それゆえ、今回発表になった最新ドット・チャートは「レームダック集団」による金利予測であることを認識したうえで分析すべきであろう。

市場もドット・チャートより、FOMC直前に発表された米国消費者物価コア指数の下げに強く反応していた。インフレ率低迷を印象付ける統計ゆえ、FOMCに向かって円高地合いを醸成したのだ。

時節柄クリスマス休暇を控え、FOMCを起点に新たな円買いドル売りポジションを作るような状況ではない。「利上げの噂でドルを買い、ニュースで売る」というポジション整理が主体である。

新年相場へのヒントとしては、記者会見中に刻々と対円でのドル売りが進行したが、対ユーロのドル売りは相対的に存在感が薄かったことだ。ECBの量的緩和縮小より日銀の出口戦略のほうが欧米市場でも意識されていることの証しとも読める。

FOMC後にNY市場のファンドたちと話していても、BOJ(日銀)という単語がいつになく頻繁に出てきた。FRB、ECBそしてBOJと続く主要中央銀行政策会議。レームダック化したFRBに対しBOJの存在感が強まり、野球に例えればまだ3回表裏が終わった程度の段階と言える。

ドル安に反応して金は反騰。1250ドル台。まだ200日移動平均線は下回っている状態。

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最後にイエレンさん、お疲れ様でした。あなたのちょっぴり訛りのある英語にもすっかり慣れました。生徒に優しくじっくり教えるような語り口は特に印象に残ります。意地悪な質問を次から次へ浴びせられ、議会公聴会では被告席みたいな所に4時間も5時間も座らされ、経済には疎い議員の明らかにテレビを意識した質問にも嫌な顔を見せず対応していましたね。記者会見で「一期でFRB議長を辞めることになって悔しくないか。」と単刀直入に聞かれ、毅然として「議長職も含めFRB要職を10年以上務め、得難い経験をさせてもらった。」と答えたときの表情はキリッとしてカッコ良かったですよ。自由な立場になって「回顧録」執筆を期待しています(笑)。 (それに比べ、パウエルさん、ちょっと、頼りないかな~~。まぁ予見を持ってはいけない。まずはお手並み拝見!)

2017年