2017年3月7日
連日、中国全人代のニュースが紙面をにぎわせている。
トランプ大統領は軍事予算を10%増。その財源ねん出のために、例えば、環境保護庁の職員を2000人リストラするなど、環境問題より軍事優先の姿勢を明確に示している。
それに対し、習近平国家主席は軍事予算を7%程度増やすようだ。初の1兆元大台突破となる。台湾独立は「断固反対・阻止」、香港独立には「前途なし」との表現で封じ込めの姿勢だ。
トランプ大統領の保護主義を意識して、自由貿易を守るのは中国だと強調する。TPPを推進してきた米国が、自ら離脱したことで、これからは、中国がRCEP(東アジア地域包括的経済連携)を主導して、自由貿易の世界的リーダーシップをとる思惑が透ける。
米国が引きこもりの保護主義に走り、中国が自由貿易を説く。そんな時代になったのか、という感慨。情けない。
中国経済は、3つの過剰を背負いつつ経済成長を目指す。鉄鋼石炭などの過剰生産能力、不動産の過剰在庫、企業の過剰債務の3つの過剰問題。しかし、秋の共産党大会を控え、優先順位としては、債務減少より経済成長、特に雇用に重点を置かねばならぬ。そこで、積極財政政策を採る。具体的にはインフラ投資と企業減税。なにやら、トランプ大統領と同じような財政政策だ。中国の財政赤字は対GDP比で3%だが、3兆円ほどの財政赤字拡大を容認。いっぽう、金融政策は、引き締めに転換する。中国人民銀行は民間銀行への資金供給のバルブを締めつつある。現在の金融緩和を放置すれば、バブルを招きかねないという危機感が強いのだ。
危うい綱渡りだが、今年はメンツにかけても、経済を支えるだろう。構造改革など痛みを伴うことは2018年以降に先送りである。
金市場の視点でも、今や、世界最大の需要国ゆえ、中国経済動向から目が離せない。
なお、今週号の日経ヴェリタス、「豊島逸夫の逸'sOK!」では「金がつないだ年金人脈」と題して書いた。