2017年6月12日
メイ首相の総選挙過半数割れが明らかになり、メイ首相が「それでも職に留まる。」と続投表明した時点で、ポンドが更に急落する局面があった。
市場が、メイ首相の単一市場アクセスにはこだわらないEU強硬離脱政策に不安を感じていることが露わになった事例であった。
とは言え、EU側は容赦ない。単一市場アクセスを維持する穏当離脱など受け入れられない。メイ首相率いる保守党の選挙敗北による英国内混乱は「離脱する国の厳しい宿命」という見せしめとなり、離脱ドミノを封じる格好の事例となる。
市場のポンド売り圧力は今後も底流として続きそうだ。
一方、NY証券取引所フロアでの会話で筆者が実感したことは、市場が「ロシアゲート→トランプ大統領弾劾あるいは辞任→ペンス大統領就任」のシナリオを好感していることだ。確率は低いがトランプ大統領の予測できない言動は結局、投資家のアニマル・スピリッツを萎えさせてしまった。VIX(恐怖指数)が低水準で推移しているのも、市場の楽観というより売買意欲の低下を示す数字と見られている。仮にペンス氏が大統領になれば「まともな政治」に戻り、親ビジネスの環境が期待できる。
コミー前FBI長官の議会証言も「テレビ中継を最初は興味津々で見ていたが、30分過ぎて新規材料無しと見切りスイッチを切った。」などの声が目立った。
なお、フロアでの会話で円相場に話を向けると「safe haven currency」という言い回しが頻繁に飛び出す。日本経済に興味を持ち常にフォローしているとは思えないのだが、円がNY市場最前線で「嵐の荒波から避難する港」として定着したことを改めて痛感した。日本語では「安全通貨」と表現されるが、相対的に安全と見做される「避難通貨」というニュアンスのほうが強い。単にsafe currency=安全通貨とはならない。
なお、北朝鮮問題に関しては切迫感が感じられない。旧知のフロアートレーダー数名は「カール・ビンソン」が何であるか知らなかった。日本では無敵艦隊としてワイドショーでも扱われ、主婦層にまで認知され始めている固有名詞である。北朝鮮の標的が米軍基地と言うことも「なるほど」と今更のような反応さえ見られる。
FTのジリアン・テット女史も訪日して、日本人個人の北朝鮮ミサイル着弾対策に関して驚き、米国民が如何に無関心であるかをコラムに書いていた。
市場でもNYと東京では相当温度差があるのだ。
金価格は1260ドル台まで下落した。
ここまで下がると値頃感が出てくる。
今週のポイントは、なんと言ってもFOMCで発表されるドット・チャート(FOMC参加者たちの将来金利予測)。来年にかけ利上げ回数が減ると金には追い風になる。一方、いわゆる地政学的要因には反応が鈍くなっている。新鮮味が薄れ、リスク慣れと言うか陳腐化したと言うか「有事の金」でも1300ドルを突破できず、日米欧の量的緩和政策からの出口模索が金には売り要因、そしてばら撒かれたマネーがマグマみたいに市場の底に溜まっている感じ(過剰流動性)が金には買い要因になっている。
そして今日の写真は京料理。
NYから帰国後、そのままECB理事会、コミー前FBI長官議会証言、英国総選挙に突入して、ひとしきり大騒ぎしてそのまま仕事で関西講演。京都に泊まり、祇園「らく山」で京料理堪能。とにかく慌ただしい1週間だったので、日本の味がカラダに沁みたね~~。NYでステーキやライ麦サンド続きの後ゆえ、日本人に生まれて良かった、という感覚(笑)。
鱧のお吸い物、大将自ら釣ってきた京都の鮎。そして京都駅に着くや、飛び込んだ「ほうじ茶ソフト」の店。京都駅構内では必ず立ち寄る。でも糖質制限中の身ゆえ罪悪感もあり(笑)、半分だけ食べたよ。
それにしてもNYの後ゆえ、京の街並みと味がジーンとくる。祇園からの帰り道、白川や鴨川でホタルも見られたし。梅雨入りとは言え、まだホタルの出も少ないけど。もっと湿気が高く蒸し暑い日の夕方でないと、蛍見物も本格的にはならないね。