豊島逸夫の手帖

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日本の解散スルーして、週末、世界は動いた

2017年9月25日

この週末、様々な国際ニュースが流れた。

トランプ大統領と北朝鮮の「口撃合戦」はエスカレートするばかり。かたやロケットマンと言えば、かたや老いぼれと言い返す。ロシア外相は「幼稚園児の口喧嘩レベル」と冷ややか。

米軍は北朝鮮沖まで爆撃機を飛ばして牽制。偶発的衝突の可能性も無視出来ず。中国の関心は、いよいよ来月に迫った5年に一度の共産党大会。習近平氏は、国威発揚、自身の政権基盤固めにやっきになっている。例えば、大事故を起こした中国新幹線のスピードを再び300キロ以上に上げて運行してみせる。ちなみに中国全土を網の目のように結ぶ高速鉄道網建設で、政府鉄道部門は2016年に債務が80兆円相当に達する。運賃収入で利息支払いさえも賄えない債務の規模。今の中国経済を象徴するような事例。

なお、10月1日から中国は「ゴールデンウィーク」に入り、おそらく日本中に中国人観光客が溢れる。ところが、中国当局は日本向けツアーを規制し始めた。理由は外貨流出を抑えるため。これは中期的に日本のインバウンドへの影響必至だね。

そして、米国ではトランプ大統領がNFL(フットボール)選手たちに喧嘩を吹っかけている。試合前の国旗掲揚の際に、トランプ大統領への抗議の姿勢で選手たちが起立せずひざまずいた。それに怒って、そういう非国民の選手は即刻クビにしろ!これはトランプ支持者集会で支持層へのパフォーマンス。しかし、スポーツの世界を敵に回すとこれは大変だよ。

そして、ドイツでは4年に一度の連邦議会総選挙。メルケル首相勝利だが、反移民、反イスラムを訴える「ドイツのための選択」=AfDが第三党として躍進。90議席程度獲得の見込み(本稿執筆時点)。ドイツ国民は、安全パイとしてメルケル首相を選ぶが、反メルケルも過激化。メルケル首相の得票率も最低水準。連立が成立せねば、再選挙さえあり得る。メルケル優位は変わらないが、ジワリと反ユーロ・反EUの波がドイツにも来ている。ここはドイツとフランスがEUの枢軸としてきっちりと結束することが重要。ところが、フランスの希望の星(だった)マクロン大統領の支持率も36%まで急落中。労働法を雇用者有利に変えて新たな新規雇用を生もうとの動きに、労働者たちが一斉に反発。ストライキ。あの国の労働者に配慮した雇用制度を変えるのは至難の技だよ。マクロン大統領の政策が間違っているとは思わないが、国民の反発は避けられない。どの国でも構造改革実行は難しい。

というわけで、世界が動く中で「井の中の蛙」日本は「解散」一色。北朝鮮問題の危機意識も、現時点では日本より米国のほうが強いという異例の事態だよ。NYの連中が言っていた。「今の日本。北朝鮮から漂流してくる氷山の海域を海図なき航海するかの如き緊迫感。なのに船中では、船長が、これからも私が船長で良いか乗客に問うている。」

なお、有事慣れした金市場は有事で売られている。1280~1290ドル台のレンジになった。

2017年