豊島逸夫の手帖

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混迷を深めるサウジ・イランの対立

2017年11月14日

ここのところ市場を賑わす中東情勢緊迫。

最大の問題はイスラム教スンニ派のサウジとシーア派イランの歴史的確執だ。

イランは、イラク・シリア・レバノンの各国国内の過激派を支援し「イラン革命軍」分子を送りこむことで、地中海に繋がるルートを確保・支配することを目論む。ISが崩壊した後になだれこんで自らの支配区域にしている。

サウジは、カタールを村八分にしてイエメンにも侵攻。イラン寄りの過激派と泥沼の戦いを演じ、シリア国内では反政府分子を支援してきた。

今しきりに報道されるレバノンも、サウジ系とイラン系が真っ向から対立してきた国だ。
宗教的対立は根が深く、今後も解消されることはまず考えられない。

ただ、イランには既にオイル・メジャーなど国際的資本が参入して国内経済を押し上げてきた。日本も重要な経済的パートナーだ。そこに、イラン嫌いで通るトランプ大統領がイラン核合意撤廃の可能性をちらつかせ、米イラン関係は悪化の一途を辿る。

一方、トランプ大統領はスンニ派のサウジ側につき、対イラン強硬政策を支持している。

このような状況の中で、32歳のサウジ皇太子が今や実質的最高権力者として「カリスマ投資家」の王子や、次期国王の座に近いと言われたライバル王子たちを拘束するという強権政治を発動したわけだ。

ここで背景として重要なことは、911米国同時多発テロの犯人たちがサウジ系だったことでサウジは米金融機関に資産を預託することが難しくなったので「投資王」王子に資産運用を委ねたという経緯。そして国王が若き皇太子可愛さのあまり、我が子に権力を集中させたことだ。とは言え、皇太子の構造改革は若者や女性には熱烈に支持されている。サウジでのビジネスにはつきものの賄賂などの旧弊を打破することはサウジで働く国際ビジネスマンにも朗報である。

しかし、強権政治による王子の資産凍結などの事態になると、サウジの国としての信用が損なわれる。サウジへの経済的関与も不安感から手控えられるようになる。

かくして国内外で激動するサウジ情勢が、最終的にイランとの軍事対立に発展することを市場は最も懸念している。

中東緊迫激化により、リスクオフで株は急落。原油・金などが高騰するシナリオだ。

筆者も今年正月の年初展望でイランリスクを挙げたが、来年2018年にも北朝鮮と並びサウジ・イランからも目が離せない。

2017年