豊島逸夫の手帖

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北朝鮮だけじゃない、市場の視点

2017年9月7日


日本では上空をミサイルが通過したので北朝鮮有事一色ですが、NY市場では連続して超大型ハリケーン到来の報道で持ち切りです。欧州市場では英国EU離脱交渉難航が最も注目されています。やはり思うことは、どこでも目の前で起こっていることが最大の関心事になるのですね。北朝鮮のICBMが米国まで到達と言っても地球の裏側のことで、まだ実感も湧かないのでしょう。温度差を感じます。


NY市場では、更に債務上限問題について、共和党と民主党の間で「3か月猶予=結論延期」という妥協案で手打ちされました。当面の米国政府機関閉鎖、米国債格下げリスクは回避されたのです。共和党は18か月猶予を主張していたのですが、民主党案を受け入れ妥協した形です。とりあえず、これでトランプ政権成立以来初の意味ある議会合意となったことは一定の評価に値しますが、3か月後には蒸し返し必至です。超大型ハリケーンの復興予算が緊急を要するので(約1兆円)、超党派が歩み寄らざるを得なかったわけでしょう。既に来年の中間選挙を控え、国民の反発は避けたいところですから。


国民の反発といえば、不法移住者が米国内で産んだ子供たちを強制送還させるという大統領決定も総スカンを食っていますね。子供に罪はない。生まれてこの方、米国しか知らない。米国人として育ち教育も受けてきた。それが一夜にして全く見知らぬ親の本国へ強制送還される。これは「道徳的問題」だろうと論じられています。ただ、この案に「ひそかに」喝采を送っている米国人も多数いることも事実なのです。


それから、FRB次期議長人事も混沌としてきました。本命視されてきたコーン国家経済会議委員長が候補リストから外れたとWSJ紙報道。トランプ大統領の人種差別容認的発言に強く反発して辞表まで書いたと言われる行動を、大統領は忘れていないようです。この確執でコーン氏が政権から抜ける、というような事態になると、これは市場でも失望感を生むでしょうね。特に大型減税案の主導的役割を果たしてきた人物ですから。奇しくも同日、フィッシャーFRB副議長が突然辞任を発表。FRBが益々トランプ色に染まってゆきます。新しいFRBがどうなるか。年末にかけて、これも市場の大きな関心事になるでしょう。


なお、金価格は1340ドル台を維持できず、1330ドル台に反落。

2017年