豊島逸夫の手帖

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中国経済不安、商品安、株・金下落に波及

2017年11月16日

10月の中国小売売上高や鉱工業生産統計が芳しくない。共産党大会後、習近平指導部が経済の「量」から「質」への構造改革を本気で進めると、足元の経済成長は減速する。平たく言えば、スモッグを解消しようとすれば車の購入を減らせばよいわけだが、自動車販売数は景気の体温計の如く見られるので、景況感悪化とされ株が下がったりする。根源にある中国の巨額債務問題も、本気で手を付ければ過渡期で破たんが相次ぎ経済にはショックを与える。それゆえ、結局、党の政治的判断で先送りされる。習近平一強政治の弊害を市場は懸念する。鉄鋼などの商品価格下落も、中国景況感悪化の象徴として受け止められる。世界経済回復を囃して買われた株は売られる。さすれば金は上がるかと思えば、コモディティー(商品)安に連れて売られたりする。昨晩は為替が久しぶりの112円台と円高ドル安なのに、NY金も一時1290ドルをつけたが結局1278ドル前後まで下がった。本欄は長期投資が基本スタンスゆえ日々の値動きで一喜一憂しない。ただ、こういう「市況の法則」に反する日もあるということだ。円建て金価格は安くなりがちの日ともいえる。買う立場なら値頃感あり、売る立場なら安すぎると感じる日だ。とは言え、プロでも短期相場を見通すことは難しいから、少しずつ買い増すことを口をすっぱくして言い続けている。

そして調整局面の日本株市場だが、海外マネー第二波が日本に接近中だ。

陸から見ると定かではないが、空中写真で見ると視野に入る感覚である。

「やはり日銀は買ったか。」

先週金曜日に日銀が717億円の株ETF買い(企業支援型は12億円)を実行したことに安心感を抱く海外勢の呟きだ。10月の連騰後、10月30日に709億円購入して以来、二回目の本格購入である。その後も、連日、日銀株ETF購入による買い支えが続いている。高値圏でも午前中に下がれば午後には買いに入る可能性があることが確認されたとの認識である。

Don't fight BOJ 日銀には逆らうな、クロダ・プット(下がれば日銀が買い支える)などの表現が引き続き飛び交う。

但し、NY市場は感謝祭からクリスマスにかけた休暇モードに徐々に入りつつある。今の時点から買いに入るファンドは、無理せず機あれば今年最後に一仕事程度に割り切っている。年内に必ず日本株でもう一仕事せねばとの切迫感は薄い。

長期マネーの米年金なども2018年前半を睨み、着々と日本株リサーチを積み上げている。

一方、既に日本株ロング(買い持ち)ポジションを持つファンドの一部は年内利益確定の機会を覗う。

統計的には海外勢のネット買い越しが縮小とされるが、グロスで見ると新規買いと利益確定売りが拮抗している状況だ。今後売り越しに転じる局面もあろうが、売り一辺倒というわけではない。海外勢の売買統計はあくまで氷山の水上の部分に過ぎない。

なお、株式市場でも中東リスクが意識されているが、欧米から見ると日本は中東リスクからは物理的に遠い国と見做されている。日本株に関する地政学的リスクはやはり北朝鮮だ。クリスマス休暇期間中に北朝鮮情勢急変の可能性を考慮すると「宵越しの銭は持てない」との如き警戒感も根強い。

好転する日本企業業績と地政学的リスクを意識して日本株パーティーに参加するが、会場の出口に近いところに陣取るというスタンスが透ける。

2017年