豊島逸夫の手帖

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市場、有事対応、円、金、急騰

2017年4月12日

地政学相場も新たな段階に入った。

FRBは今年2~4回の利上げを検討し、バランスシート圧縮議論も年内に始まるという状況で、米10年債利回りは2.3%台から2.2%台に下落してドルが売られている。日本時間昨日朝もイエレン氏が雇用統計後、初の講演で失業率下落を評価して「利上げを長く待ち過ぎたくはない。」と発言したが相場はドル安となった。

マクロ経済由来のドル高圧力を跳ね返し、地政学的要因によりドル安円高が109円台で進行している。

雇用統計発表日(7日)には、失業率改善、賃金上昇堅調が6月利上げ説に追い風となり、地政学的リスクに起因するドル安円高圧力を押し切り、111円台を回復した事例との対比が鮮明だ。

昨日の地政学的要因としては、トランプ大統領の「北朝鮮はトラブルを求めている。中国が助けに入れば良し。そうでなければ、彼ら抜きで我々は問題を解決する。USA。」とのツイッター呟きが最後通告的メッセージと市場では受けとめられた。米原子力空母カールビンソン艦隊が、方向転換して朝鮮半島に向かう映像のイメージがだぶる。米中フロリダ会談では結局、北朝鮮問題解決に向けての進展は見られなかった。

いっぽう、シリア問題では米国側とロシア側の言い分が真っ向から衝突して、非難合戦がエスカレートしている。トランプ大統領当選直後の米露接近ムードは吹き飛んだ。

更に、スパイサー報道官が「ヒットラーでさえ化学兵器を使わなかった。」との自らの失言について謝罪するとの一幕も、政権の信頼性が揺らぐ印象を与えた。

マーケットは「一触即発」に備え、臨戦モードに入ったといっても過言ではあるまい。

VIX(恐怖指数)も今週に入り動意づき、13台から15台まで急騰中で今年最高の水準にある。

金価格もシリア空爆で一時1270ドル台を瞬間的に突破した後、雇用統計後には1250ドル台まで急落。しかし、昨日は一気に1270ドル台まで戻した。今朝は1280ドルをうかがう地合いの様相だ。プラチナも3%以上急騰。有事の金買いは一過性なのだが、今回はその頻度が多いので押し目はすぐに拾われる。フランス大統領選挙で反EUを唱える左派メランション候補が支持率を18%に増やし、第四の候補として急浮上。

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テロ事件が起きるたびに、反EU候補のルペン氏とメランション氏には追い風が吹く構図となっている。

ただ、欧米市場は既にイースター休暇モードだ。

円がVIX指数と同じように市場の不安係数のごとく見做されているので、アジア時間帯の動きが気になるようだ。

「北朝鮮ミサイルが日本本土に着弾すれば円は99円。」などの意見もあり、市場が臨戦態勢に入ったことを実感する。

「ミサイルを撃ち込まれた国の通貨が安全通貨として買われるか。」との質問の答えは「YES。日本は債権国であることに変わりはない。

たしかに東日本大震災の時も円高に振れた。

対外純資産レパトリの可能性もある。

ただし、有事の円買いは一過性であり、中期的トレンドは金融政策などのマクロ経済要因が決める。今後年内に控える2~4回の米利上げ、そしてFRB資産圧縮議論をこなして円高が継続するシナリオは考えにくい。円安ドル高に転じれば金は下がる。有事の金に惑わされることなく冷静に見るべき。いつも云っているように中長期的には有事の金は売り。平時から地道に買い増すもの。

個人投資家も有事対応の心の準備は欠かせない時代となった。

さて、我が家の桜も満開。朝日が当たって眩しい。

今年のGWの楽しみは越後湯沢の麓で花見をして、山の上の春スキーで汗をたっぷりかいて、温泉に入って帰る、というスキー花見ツアー(笑)。

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それにしても、先週あたりから東京は欧米人の観光客が多いね。うちの住宅街近辺の商店街でもウロウロしている。イースター休暇だね。

2017年