豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. AI運用の死角、NY株でフラッシュクラッシュ
Page2350

AI運用の死角、NY株でフラッシュクラッシュ

2017年7月12日

日本時間昨晩12時過ぎ。ダウ平均が瞬間的に100ポイント幅でいきなり急落後、急激に買い戻された。いわゆるフラッシュクラッシュである。キッカケは、トランプ大統領長男がロシア関連メール多数を公開したこと。その中に「お父さんに有利な情報」「クリントン候補を法的に訴えるに足る情報」との記述や「I love it いいね」とのトランプJr.の反応が含まれていた。これはロシアゲートに関する決定的証拠(smoking gun)になり得るとの見方もNY証券取引所フロアーでは出始めている。

この報道にAIが瞬間的に反応して大量の売り注文を発動。極めて流動的な市場環境の中で直ぐに買い戻されたのだ。

一般的に市場は、トランプ政権動向よりイエレンFRB動向に注目している。しかし、さすがに成り行き次第では大統領弾劾にもつながりかねないEメールが公開されると、コンピューターが瞬間的に反応することが図らずも実証された。

一方、外国為替市場でも同時刻にドル円相場が114.40台から113.90台にまで円高に急激に振れた。トランプ政治リスクを嫌気して、相対的「安全通貨」とされる円が買われたのだ。円安が急進行しており、短期通貨投機筋が円買い手仕舞いのタイミングを見計らっていたので、恰好の口実を提供する結果にもなっている。

ドルに関しては、昨晩は米10年債利回りの上昇も一服していた。ECB(欧州中央銀行)の量的緩和縮小観測が依然生々しく残る欧州市場は独10年債利回りが続騰したことと対照的な動きだ。ブレイナードFRB理事(ハト派)が、利上げは慎重に、資産圧縮は早めにと講演で語ったことも材料視された。資産圧縮のほうは開始時の量が限定的で、バーナンキショックの二の舞だけは避けたいFRBの意図が明確だ。やはり利上げ回数が直接的要因としては重視されるので、ハト派発言はドル安の追い風になりやすい。金価格はドル安、新たなトランプ政治リスクで買戻し。1220ドル台。

今週市場が最も注目するイエレン議長議会証言を控え、市場の視線はトランプ大統領よりイエレン議長に向かう。

ただ、外為市場でも金市場でもAI運用の影響が強まっており、イエレン発言の解釈次第で新たなフラッシュクラッシュがいつ起きても不思議ではない。

情報の見極めがより一層肝要になっている。

2620.png

2017年