豊島逸夫の手帖

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日米首脳会談後の市場展開、日米に温度差も

2017年2月13日

今日月曜日、「日経プラス10」(BSジャパン、夜10時から)に生出演して、日米首脳会談後のマーケットを語ります。

http://www.bs-j.co.jp/plus10/


さて、本文。

「おめでとう」「良かったね=Good job!」

週末、普段は辛口のNY市場関係者たちが、思わぬ賛辞を寄せてきた。

トランプ大統領の安倍首相厚遇ぶりは、米国人投資家にも強い印象を残したようだ。懐疑論も目立つ日本市場より日本株に対しては素直に積極的に評価している。米国株の高値警戒感、欧州株にまとわりつく経済不安を考慮すれば、日本株にもリスクはあるが、相対的にまだ「マシ」という発想である。

北朝鮮弾道ミサイル発射のニュースも、日本株には不安要因のはずだが、「日本を100%支える」とのトランプ発言が、日本株への心理的下支えを連想させている。

筆者が驚いたのは、この1週間で、日本の自動車問題についての理解が急激に深まったことだ。日本車の現地生産・雇用の実態、米国車が日本で売れない理由などが、客観的に語られるようになった。「右ハンドルの国に左ハンドルでは受け入れられないだろう。」というような指摘が米国側から出てくる。

とはいえ、為替・通商問題に関して、日本を支えるとは言っていない、との冷めた見方もある。安倍首相訪米時はトップ扱いで報道されたが、帰国時にはメディアの関心もメキシコ人強制送還問題にシフトしている。「この件は選挙公約を実行しただけ」とのトランプ大統領のツイートも、為替・通商面での選挙運動期間中のトランプ発言を改めて想起させている。

総じて、外国人投資家の間でも日米首脳会談後の市場の反応としては、短期的変動は不可避だが、潮流として日本株高・円安が想定されている。特に短期筋は、日経平均2万も視野に入れ、安倍トランプ会談のモメンタムに乗る動きが顕在化しそうだ。長期マネーの米国年金も、両首脳の個人的「ケミストリー」即ち「相性が良い」ことに安堵を感じている。アンダーウェイト気味であった日本株の運用比率を増やす稟議を立てやすい市場環境になった、との見方が象徴的だ。金に関しては、著変なし。底堅い。

トランプリスクとされる「予見不能の傾向」については、肩をすくめ「4年間は付き合うしかない」と割り切ってきている。このリスクは「前提」としないと、運用計画そのものが立てられないからだ。トレーダーやアナリストの間では、予見できない展開に関しては、免責されるごとき風潮も垣間見られる。

トランプ大統領が「ひとつの中国」容認に転じたことも、結果論だが、北朝鮮に対して中国に調整役を期待する「取引材料」となった感がある。現時点でのトランプ政権の外交優先順位は、北朝鮮、イラン、そして中国との市場内議論もあった。今週に関しては、移民問題に揺れるメキシコと、首相が訪問するカナダが最大の関心事になろう。

その間、日本の通商・為替問題が蒸し返される可能性は低い。

いっぽう、金融政策面で、FRBタルーロ理事退職により、FRB内で3つのポストが空席となり、トランプ色が強まるキッカケになるとの認識が広がっている、イエレン議長の議会証言、それに対するトランプ大統領のツイート反応なども大きな材料となりうる。欧州関連では、ここにきてギリシャ債務問題再燃が懸念され始めた。

日本株も円相場も、日米首脳会談によりトランプ関連の展開は一巡して、本来のマクロ経済・企業業績そして欧州経済不安などが材料視されそうな地合いである。

2017年