豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 日米政権難渋、円・金買い誘発
Page2357

日米政権難渋、円・金買い誘発

2017年7月24日

21日のNY市場時間帯に、突如スパイサー報道官辞任、スカラムッチ氏広報部長就任が発表され、再びワシントン発政治要因にマーケットが揺れた。特に円相場は111円台前半まで続騰。20日にロシアゲート関連新情報が流れ111円50銭台まで急騰した後、112円前後まで戻していた。そこにトランプ政権内紛の報道が流れ円買いが再燃したのだ。

18日にはオバマケア撤廃・代替案の議会採決断念の煽りで、112円台から111円台に突入している。先週だけで3回も米国政治要因が円高を誘発したことになる。

この展開を受けてヘッジファンド、特にCTA(商品投資顧問)と呼ばれる超短期筋がドル売り、円買いトレードに動く兆候が見られる。

今朝も仙台市長選自民敗北、日経調査安倍政権支持率39%に下落の日本発報道を聞きつけ、ヘッジファンドが動いている。

「センダイ」と聞いて、昨年G7財務相・中央銀行総裁会議が開催された都市かとの認識も見られる。

ドル安の影響で人民元高に振れていることも注目されている。中国を人民元安誘導の為替操作国と非難してきたトランプ大統領自身の難局が、結果的に人民元高を誘発するという皮肉な展開である。

そして、ドル安加速の流れに反応して金価格は1250ドル台まで戻ってきた。ここまで反騰するとやや割高感は否めない。ここでも買いの主体は短期投機筋である。
ヘッジファンドはECB量的緩和縮小観測によりユーロ買いポジションを急増させたが、短期的には既に手仕舞いの動きも見られる。次の標的を模索していたところに、日本発で円高を示唆するごときニュースが飛び込んだわけだ。

米金融政策面では9月資産圧縮、12月利上げ説がベースラインのシナリオとされるが、いずれにせよ年内は極めて慎重な金融正常化進行となりそうだ。少なくとも12月まで利上げは執行猶予とすれば、年内はドル安とのヘッジファンドの読みも垣間見られる。

そこでドルを売って、買う通貨の選択肢は円、ユーロ、新興国通貨、そして無国籍通貨=金ということになる。日本発の政治要因にも敏感になるわけだ。

なお、25日にはクシュナー上級顧問が非公開で議会の場に質問に応じる予定だ。同氏は妻のイヴァンカさんと共にスカラムッチ新広報部長任命を積極的に大統領に進言したとされる。スパイサー報道官側に立つバノン氏との内部亀裂は決定的だ。益々政権内で発言権を強めるクシュナー氏が、ロシア側との接触について、どのように答えるのか。非公開だが、新たな報道に市場も神経質になっている。

一方、スカラムッチ氏はNY市場でヘッジファンド業界出身。米国CNBCのコメンテーターでもあったので、視聴者に顔は知られている。早速「大統領への期待と現実の間にはアービトラージ(裁定取引)が働き、いずれ誤差は是正される」という表現を使っていた。同氏任命にスパイサー報道官が激怒して、大統領執務室で直談判したとされる。

いずれにせよ、大きな動きは出にくい今回のFOMCより、日米政権の難渋にサプライズ性を予感している市場である。

2017年