豊島逸夫の手帖

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オーストリア選挙、右翼政党躍進が意味すること

2017年10月16日

オーストリアの国民議会(下院)選挙で、中道右派の国民党と極右政党の自由党が合わせて過半数に達する勝利となった。中道左派の社会民主党は議席数を減らし敗北。これまでは左派社会民主党と右派国民党の大連立政権だったが、この選挙結果により中道右派・社会民主党と極右自由党の右派連合政権誕生の可能性が強まる。

ドイツ総選挙でも民族主義政党のAfD(ドイツのための選択肢)が躍進したばかり。

そこにはネオナチの流れも透ける。

そもそもヒットラーはオーストリア出身。

日経ウィーン発の記事はこう説明する。

「一つの民族、一つの国家、一人の総統」という自由党のスローガンは、ヒットラーが欧州の全ドイツ民族結集を訴えた標語だ。自由党元党首はネオナチ団体出身である。選挙期間中は「健全な愛国主義」を標榜して、ネオナチ色の払拭に努めていた。

「欧州3000年、ドイツ1000年」というドイツAfD幹部のスローガンは、ナチスの掲げた「1000年帝国」を連想させる。

「街を歩くとドイツ人が見当たらない。」

「ベルリンの学校ではトルコ訛りのドイツ語しか学べない。」

「ドイツや英国のサッカーチームは異民族選手ばかりが目立ち、伝統的なドイツや英国のチームとは言えない。」

彼らの発言は、トランプ大統領が同感を示した白人至上主義を連想させる。単なる反難民というウケ狙いの「ポピュリズム=大衆迎合」では片づけられない。そこにはもっと根深い人種差別の思想が淀む。

ドイツでAfDが強い地域は反ナチス教育が薄かった東ドイツ。オーストリアでは「ドイツに無理やり教育された」との被害者意識が強い。

ここに欧州版歴史教育・教科書問題を見る。

2017年はオランダ・フランスの選挙で反EU・反移民政党が敗北して極右の流れは止まったかに思えたが、年末に近づきドイツ・オーストリアが火種となる兆しが出てきた。

市場も今後の展開に注目している。

2017年