豊島逸夫の手帖

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円高進行111円台、共振する4つの理由

2017年2月7日


ヘッジファンドが「混み過ぎた」ドル買いトレードを見切る動きが出始めた。その背景に4つの理由が指摘される。


1)トランプ大統領円安牽制発言の影響
2月10日のトランプ・安倍会談に先立ち、トヨタが通期利益上方修正したことが、米国側を刺激している。日本側は米国現地生産の面を強調するが、米国側は円安の企業業績貢献度を指摘してくる可能性がある。トランプ大統領の保護主義傾向は強まるばかりで、通商・通貨両政策をセットで攻めてくるだろう。アメとムチを使い分けるのがトランプ流だ。まず、日米安保協定について、真っ先にマティス防衛長官を派遣しての「満額回答」。しかるのち、日米首脳会談には、一転、厳しい態度で臨む目論みも透ける。市場は、米国発政治的円高プレッシャーを織り込み始めている。


2)強まる米国次回利上げ先送り説
1月雇用統計はじめ米国マクロ経済指標はおおむね好転している。しかし、追加利上げに関する切迫感は薄い。賃金が上がらず、トランプ大統領経済政策の影響を見極める必要もあるからだ。3月利上げは見送られ、早くて6月ということになると、年前半は、利上げ=ドル高のシナリオが顕在化しにくい。ドル買いポジションを引き続きキャリーしにくい市場環境といえる。


3)欧州不安が誘発する安全通貨としての円買い
フランス大統領選挙が近づき、いよいよ欧州国債市場にも影響を与えるようになった。フィヨン候補が妻の公金使用疑惑を完全否定して選挙運動を続ける意思を明らかにしたので、ルペン候補が有利との見方が増えてきた。反EU政党の躍進は、既に、独仏国債利回りを拡大させつつある。更に、イタリア銀行不安も、一触即発の危うい状況にある。構造問題ゆえ、根源的解決の道が見えない。ギリシャ債務不安まで蒸し返されてきた。安全資産として金が買い直されているのも示唆的だ。リスクオフの円買いが生じやすい市場環境といえよう。ドラギECB総裁が、緩和継続を明らかにしたこともユーロ売りを誘っている。


4)日銀金融政策に対する市場の疑念
日銀のイールドカーブコントロール(長期金利実質固定策)は、トランプ陣営から、通貨安政策と指摘されるリスクを孕む。そもそも、世界的金利上昇傾向の中で、日銀のテーパリングに関する議論も出やすい。まだ、金融政策決定会合で論じられる段階ではないが、市場は日銀の真意の瀬踏みを始めている。


いっぽう、トランプ大統領の経済政策は、インフレ・金利上昇バイアスを抱合するので、ドル高説も根強い。そもそも、米国債保有を日本中国など外国に依存するので、ドル安政策は米国債売却リスクをともなう。
通年でみれば、年前半は円高を試し、年後半は円安を再び試す展開も視野に入ってきた。


金は1230ドル前後まで続騰。
イラン情勢緊張も効いている。トランプ政権が現在最も敵視する国が、中国ではなく、イラン。

2017年