豊島逸夫の手帖

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中国債券市場に異変、人民銀行総裁も警鐘

2017年11月1日

中国10年債利回りが上昇して今週は4%の大台に接近する局面もあった。現地では3年ぶりの高水準とされている。金融当局による「金融締め付け」懸念を映す現象だ。

ミンスキー・モーメントという単語が中国銀行界でも話題になるようになった。キッカケは中国人民銀行周総裁の発言だ。

中国企業・家計部門の過剰債務に対する過度の楽観論を戒め「ミンスキー・モーメントと呼ばれる状況は防がねばならない。」と警鐘を鳴らしたのだ。退任を控え、発言も大胆な表現を使ったのだろう。

ミンスキー・モーメントとは、信用の膨張で急騰した資産価格の急落現象を指す用語だ。ハイマン・ミンスキーという経済学者の指摘による。

この発言が流れた日には、香港株が急落して米国債・円・金の安全資産が買われる一幕もあった。

時あたかも中国国内では、世界的緩和からの出口問題が意識され始めた。中国経済とて世界経済の波はもろに受ける。10月には中国消費者物価指数も生産者物価指数も事前予測を上回る幅で上昇して、インフレ懸念がジワリと拡散している。その主たる要因は鉄鋼・石炭価格なのだが国内金利も上昇予測が目立つ。


更に、国営銀行再編・リストラ、シャドーバンク淘汰のため、習近平政権は金融面での締め付けを強めるとの観測が台頭している。

しかし、締め付け過ぎれば破たん・信用不安の連鎖が不可避だ。

国務院の意を受けて動く「優秀なテクノクラート集団」である人民銀行も危うい綱渡りを強いられる。人民元高は中国製品の国際競争力を弱める。人民元安は資本流出を加速する。

そこでIMFからSDR構成通貨=国際通貨としてのお墨付きを得ているのだが、人民元自由化どころか人民元管理強化に舵を切り換えている。

このような状況下では中国国民はミンスキー・モーメントに備えねばならない。金保有もその一環であり、経済有事に対するヘッジとして金が買われているのだ。

2017年