2017年8月3日
「中国に北朝鮮への仲介役を期待したのに全く役立ってくれない。」トランプ大統領が我慢の限界とも言える発言・ツイートを繰り返し、俄かに米中関係が悪化しています。北朝鮮問題解決を優先させ、中国に対して融和的姿勢を取り続けてきたのですが、所詮「蜜月関係」も「同床異夢」だったわけですから来たるべきものが来たという感じです。
大統領選挙期間中には「中国製品に45%の関税をかける。」などと息巻いていましたが、大統領就任後はその「選挙公約」も封印してきました。その間、米中経済対話でも結論は出ず。
そこで、ここにきて中国内の米国企業への規制をまず槍玉に上げ始めました。例えば、データセンターは中国国内に置け、などの規制により中国側に情報技術が流出するリスクがあるからです。
一般的にこのような通商問題を提議する時は、国際機関のWTO(世界貿易機構)を通すことが通例です。しかし、米国には不公平と思われる通商問題に対しては、一方的に経済通商制裁を課すことが出来るという独自の法律があります。これはWTO発足前からの遺産なのですが、トランプ大統領はこの法律を使うようです。もしそうなると、これは中国側も黙ってはいないでしょう。特に5年に一度の共産党大会を秋に控え、習近平国家主席も対米弱腰外交は絶対に出来ません。対抗上、例えば米国製飛行機や大豆の輸入自由化を撤回するとか、更に外貨準備として大量に保有する米国債を売り始めるなどの方策が考えられます。後者はドル金利上昇、ドル高を招く可能性があります。金には売り要因ですが貿易戦争に発展するとリスクオフで買い要因にもなります。
そもそもトランプ大統領は通商問題と北朝鮮の外交問題を「駆け引き」の材料に使っているわけです。
しかも通商問題の解決には年単位の時間がかかります。
対して北朝鮮問題は待ったなし。
北朝鮮への軍事介入が現実味を帯びて、同時に米中貿易戦争が勃発するというのが最悪のシナリオですね。確率は低いですがテール・リスクとして考えておくべきでしょう。