豊島逸夫の手帖

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イエレンFRB議長 後継候補は元商品トレーダー

2017年7月13日


昨晩のイエレンFRB議長議会証言では、来年の任期切れについて、いくつか質問されていた。「私は任期を全うする。」と毅然と答えていたが「FRB議長として最後の議会証言になるのでは?」と問われたときは「It might well be.そうかもしれない。」と語っていた。
既に、マーケットではイエレン議長の再任は殆どあり得ないシナリオとされている。
そこで市場の関心は当然次期議長人事に集まる。
利上げサイクルを締めくくり、資産圧縮を軌道に乗せる仕事は未知の領域での「壮大な実験」だ。容易ではない。
その言動がマーケットに与える影響力は、大統領より強いケースが多い。


そこで筆頭候補として名前が挙がるのが、コーン国家経済会議委員長だ。筆者が6月にNYでジム・ロジャーズ氏と対談したときも、この人事が話題になった。普段は人物評価に厳しいジム・ロジャーズ氏も「コーン氏は悪くない。」と語っていた。
コーン氏はNYMEXのフロアで働いていた元コモディティーディーラーとしての経歴があり、マーケットにも内にも共感を覚える人が少なくない。叩き上げで自らを積極的に売り込み、遂にはゴールドマンサックスのナンバー2でCOOの座に昇り詰めた。そもそも同社のCEOブランクファイン氏も元貴金属会社営業部長で、ゴールドマンサックスに買収され、籍を移し出世したという、これぞアメリカンドリームと言えるような経歴を持つ。
コーン氏はエコノミストではなく、FRB議長候補としては異例のキャリアを歩んできた。
そのマネジメント・スタイルは「荒っぽく、大胆で、直球を投げ込む」タイプとも評される。理論派の中央銀行家の対極と言えよう。
しかし、トランプ政権内ではパリ協定脱退には異論を唱えるなど「良識派」と見られている。超党派で人望も厚い。ただ、日銀に対する財務省のような関係となるムニューチン財務長官も、ゴールドマンサックス出身なので一部には抵抗感もあるようだ。
市場が最も気になる金融政策への考えだが、その経歴が示すとおり未経験者である。「壮大な実験」を遂行する人物としては、中央銀行サークルのしがらみが無いゆえに適任かもしれない。但し、ハト派かタカ派かとなると全くの未知数だ。それがリスクとも言える。


対抗馬としては、学究派のケビン・ウォーシュ・スタンフォード大学経営大学院講師の名前が挙がっている。元FRB理事でブッシュ政権で顧問を務めたので、こちらはオーソドックスなFRB議長候補と言えよう。
通常、FRB議長人事は任期切れの前年8月頃には「内示」があることが多かった。しかし、トランプ大統領がFRB議長人事を決めるのは秋以降の可能性が高い。
市場としては早く決めてほしいところだ。来年の利上げ回数、資産圧縮の落としどころ(2兆ドルか、2.5兆ドルか、3兆ドルか)など、新任議長次第の判断が気になる。
かたやイエレン現議長は、レームダック化する前に金融正常化の道筋固めを急ぐことになろう。


今日の写真は豆腐料理。
樽いっぱいの豆腐。とうもろこしのスープ。
豆腐好きでね。おいしい豆腐は何もかけず、そのままいただく。豆腐評論家です(笑)。


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なお、明日金曜の日経プラス10(BSジャパン)に生出演。
今回は金の話です。出番は夜10時半頃。

2017年