豊島逸夫の手帖

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ヘッジファンドが見る米朝開戦の確率は?

2017年4月25日

北朝鮮有事、軍事介入が起こった場合にマーケットで動くのはヘッジファンドだ。年金などの長期マネーはプットオプションなどで予めヘッジをかけているので、ばたつくことはない。そこでNYのヘッジファンドたちに確率を聞いてみたが見方は割れる。平均すると30%前後だが、なかには50%あるいは0%とする見解もあった。

ただ、一対一の会話で本音を聞くと「ありえない。シリア、北朝鮮、そしてイランとアジア・中東二面作戦となってしまう。」という否定的見方が殆どだ。しかし、昨年英国EU離脱とトランプ当選を外したトラウマが残るので「まさか」では片づけられない。ゆえに面と向かってNO!ありえない!と言い切れない。しかもトランプ大統領ゆえ、やりかねないとの思いもある。シリアでは化学兵器を被弾して苦しむ子供たちの画像を見て、即空爆を決定した。その思考過程に戦略はなかった。マティス国防長官、マクマスター国家安全保障担当大統領補佐官が、無謀な二面作戦に対し「殿、ご乱心」とどこまで引き止められるか。娘婿でトランプ大統領の信望厚いクシュナー氏が「中東担当」を兼務するのでキーパーソンになるかもしれない。ただ、北朝鮮のミサイル・核兵器開発を阻止するには、今しかないとの切迫感も強い。以上を勘案したうえでの平均30%という数字だ。これは筆者の想定よりも高い。

ここにはヘッジファンドゆえのバイアスがかかっているかもしれない。彼らは有事に先読みして動かねば、そもそも存在価値を問われる。ただでさえ運用実績が低迷し、高い運用フィーが問題視されている。ゆえに有事確率を高めに見ることになる。「平時」で相場の凪状態が続けば干上がってしまう。とにかく価格変動(ボラティリティー)が糧なのだ。

そこで有事に標的として狙われやすいのが「円」。

北朝鮮ミサイル本土着弾で有事の円高になるのか、円安に振れるのか、未だに意見が分かれる。その結果ボラティリティーは高まるので、彼らにとっての「収益機会」は増える。勿論「損失機会」も増える。

「円は安全通貨か」との議論も繰り返される。ドルの発券国米国はトランプ大統領の予見不可能な動きに揺れる。欧州のフランスリスクは後退したものの主要国の構造問題は変わらない。その点、日本は対外債権国でしかも森友事件にも関わらず、政権支持率は相対的に高い。円買いの言い分を聞くと様々だが、有事=円買いが広範にインプットされている。

本当に北朝鮮有事となれば、99円の円高を見込むファンドたちと120円を視野に動くファンドたちが、マーケットで空中戦を演じるシナリオが現実味を帯びる。

さて今日の写真は、昨日のミヤネ屋出演時。この番組は午後2時からなので現役組が見ることはないけど主婦層、シニア層では視聴率が高い。全国ネットだが関西の読売テレビ制作ゆえ濃い番組になっている(笑)。「金」のようなトピックを扱う場合には、出演するほうも煽らないように気を使う。地上波ゆえ影響力も強い。

昨日のキッカケは例の福岡現金強奪事件。そこで金が使われた。

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なぜ、金を買う時に現金決済なの?という素朴な疑問に対して、金(キン)はお金(オカネ)だから両替に近い。私もスイス銀行外為部門所属で、たまたま無国籍通貨=金担当になったことがキッカケで深入りした。外国旅行する時にドル紙幣に両替したければ、一万円札を持ってゆくでしょ。私がアドバイザリーをやっていた中国の最大手商業銀行の銀行博物館に、17世紀当時のこの銀行の看板が展示されていた。

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「兌換各国金銀貨幣」。若い人は知らないと思うけど昔の外為専門「東京銀行」みたいなもの。

ワイドショーゆえあざとい内容も入るのは承知のうえ。

サッカーに例えれば、アウェーのゲームもやらねばマーケットの裾野は広がらない。日経プラス10などの経済番組とは全く違うけれど慣れてきた。

2017年