豊島逸夫の手帖

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米国債保有減らすFRB、増やす中国

2017年6月16日

FRBが保有米国債縮小を月60億ドル上限に年内に開始する計画を公表した翌日、中国が米国債保有を今年に入り4月までで411億ドル増やしていることが米財務省・FRBの統計で明らかになった。

FRBの資産圧縮基本計画では、3か月ごとに上限を引き上げ1年後には米国債保有縮小ペースが月300億ドルになる。

FRBが米国債保有を減らした分の一部を中国が引き受けるという構図が浮かぶ。

ストックベースで米国債保有残高を比較すると、FRBが2兆4648億ドル(17年6月)、中国1兆922億ドル、日本1兆1069億ドル(17年4月)となる。既にFRBの保有額に匹敵する量を中国・日本の二か国が保有している。米国債の(米国から見た)外国保有の総額は6兆737億ドルに達する。

ちなみに日本の保有量は1~4月で44億ドルだけ増えている。

市場が最も気になることはFRBと異なり、当たり前のことだが中国は米国債購入計画など公表していないことだ。中国が米国債利回りの変動要因となると予見しがたい部分が多く、仮に中国も減らすと思わぬ金利急騰を誘発しかねない。あるいは結果的に中国が米国債の買い手として存在感を高め、「白馬の騎士」役を演じることになるかもしれない。

更に、中国の米国債売買状況を最も気にしているのはムニューチン財務長官かもしれない。

FRBが米国債保有を縮小しても、財務省は米国債発行を減らせないからだ。特にトランプ経済政策の目玉である大型減税・インフラ投資は「財政均衡」重視とは言え、結局財源を国債発行に依存する可能性は無視できない。

なお、中国側の台所事情を見れば、外貨準備は微増傾向に転じている。

中国人民銀行が新たな人民元設定基準を導入して、実質的な人民元管理強化に動き始めたところだ。米利上げによるマネー流出に歯止めをかける意図が透けるが、市場ではこの新措置導入後、人民元の対ドル相場が強含み気味で推移している。当面は米国債購入増の市場環境が整いつつあるように見える。

一方、米利上げでもドル長期金利は上がりにくく、10年債と2年債の利回り格差は縮小傾向にあり、イールドカーブはフラットになっている。未だに「コナンドラム=謎」と言われる現象だけに、中国の動きにも目配りが欠かせない状況が続きそうだ。

そして、中国人民銀行が公的金準備を増加する可能性も高い。

私は中国の公的金準備がいずれ現在の3倍、即ち5000トン程度にまで増えると見ている。まだ将来の話だが、中国がいまやダントツの金生産国トップであることを考慮すれば、充分に実現性はある。5000トンに増やしても、外貨準備に占める金の割合は10%以下に留まる。欧米諸国の60~70%台に比し、相対的にそれでも決して多いとは言えないのだ。私の長期金価格強気論の拠りどころにもなっている見通しである。

さて、昨晩は会食で高輪の三友居(さんゆうきょ)。

京都に本店があるお茶席仕出し専門の店。東京高輪に唯一食事できる店を出している。昨晩は京都から取り寄せてもらった鮎と鱧。写真は鱧鮨と蒸しアワビ&ナスなどの野菜の一皿。東京で京都の本場の味を楽しめる店だ。お茶席にも出張するので、茶懐石をいただいたこともある。

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今日は熊本出張。講演タイトルは「ロシアゲート。トランプ政権は続くか。」明日は大阪で例の朝日放送「正義のミカタ」生出演。今回の私のお題は「明暗分けた英仏選挙」。近畿、中京、北陸地区で視聴可能。そして日曜日には東京でNY現地ロケ番組のスタジオ収録。目玉はジム・ロジャーズ氏との対談。

2017年