豊島逸夫の手帖

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色々盛り沢山の24時間

2017年6月29日

フランスの革命記念日(7月14日)にトランプ大統領がフランスを訪問することで合意に至り、フランス国内では非難の渦。「トランプお断り」のスローガンが目立つ。世論調査でもトランプ大統領を信じられるというフランス人は14%。それでもオランド前大統領の支持率(一桁)よりは高いけど(笑)。

マクロン大統領はG7でトランプ大統領と「げんこつ握手」して見せた。「主張すべきところは絶対譲らない意志を見せたかった。」

トランプ大統領の公約スローガンMake America Great AgainをもじってMake the Planet Great Again、米国ではなく宇宙を偉大に、と言ってのけた。一方、トランプ大統領は「31歳も年下の若造が洒落たことを言うじゃないか。」と鼻で笑うような態度。それが、テロ問題など共通の敵に対して団結する姿勢を誇示するごときフランス訪問になった次第。現実的妥協だね。

トランプ大統領は軍事パレード謁見が大好き。革命記念日にフランスにゆけば定番で軍事パレードがある。トランプ大統領の夫人もモデルだった頃フランスに住んでいた。

さて、どのような訪問になるか注目。

習近平国家主席の香港訪問も気になる。香港は二つの中国政策を巡りidentity crisis(アイデンティティーの危機)と言われているからね。
北朝鮮もトランプ政権はいよいよ「極めて切迫した事態。全ての選択肢あり。」と軍事介入の意図を更に強めてきた。米国人学生の拘束・死亡で急速に北朝鮮リスクが意識され始めている。NYではこれまでになく緊張感が漂う。

もう一つの話題。

ドラギECB総裁がポルトガルでの中央銀行会議にて「量的緩和縮小を示唆」したとされる発言は、マーケットの読み違えであったことが判明。欧米市場で最も売買が多い通貨ペアのドル・ユーロ相場は、ユーロ高から一転ユーロ安になった。

事の発端はドラギ総裁が6月ECB理事会の時に比し、欧州経済を楽観的なトーンで語ったことに始まる。「デフレ圧力よりリフレ圧力のほうが強い。」この発言を市場は、すわ量的緩和縮小開始を意識かと解釈した。しかし、ドラギ総裁は「慎重に事に当たらねばならない。」とも語りヘッジもかけていた。そしてECB関係者が「市場は勘違いしている。」と語り、市場がひっくり返った次第。

いかにマーケットが量的緩和依存症になっているか。量的緩和の点滴を外すかもと言われるとパニック状態になること。2013年5月に当時のバーナンキFRB議長が、量的緩和縮小するかも(かも、だよ)と言っただけで、日経平均が1000円以上も暴落する事態となった。リスクオフの典型でこういう場合、極端だと金も他の資産の損失穴埋めのために売られることさえある。とばっちりでね。

昨日のドラギ発言フライング劇は、ECBが量的緩和縮小する場合の市場混乱の予告編みたいなことに。

そして、未だに量的緩和フル回転中の日銀は、周回遅れでいずればら撒いたマネーを回収せねばならない。黒田さんの後任の仕事になるけど、誰もやりたがらない。貧乏くじだよね。

参考までに、日米欧の量的緩和の軌跡を表わすグラフを添付。

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順番に米国、日本、欧州。米国がマネー回収計画(資産圧縮)を発表した段階。FRBも日銀もECBも、ほぼ同額のマネーをばら撒いてきた。ざっくり、それぞれ500兆円前後。

これほどに過剰流動性慣れした市場が、過剰流動性離れする時のリスクを肝に銘ずべし。金もこの過剰マネーにより買い上げられてきた面は否定できない。

そして、もう一つの写真は昨日日経CNBC生出演の時。2017年下期マーケット全般展望を語った。ドル円の予想グラフが写真に写っているね(笑)。この番組は日経チャンネルマーケッツでVOD配信開始。局からのリクエストで原油、日本株、円の下期予測グラフを披露した。

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2017年