豊島逸夫の手帖

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英国EU離脱、離婚の手切れ金はいくら

2017年12月5日

メイ首相とユンケルEU委員長のトップ会談が行われました。会談後の記者会見を見ていましたが、メイ首相がしきりに笑顔を作って「大丈夫OKよ。」と繰り返しているのに対し、ユンケル委員長の方は「合意には至らず」と渋い表情が印象的でした。来週の会議に持ち越しのような状況です。

やはり難航しているのは手切れ金。EU側は離婚して出てゆくのは勝手だが払うものは払ってもらうよ。2020年までは英国のEUへの予算拠出を前提に経済計画が進んでいるわけだし、他にも英国参加で始まったプロジェクトをいきなり抜けられても困る。だから一括手切れ金を払えと言うわけです。妥協点を探る話し合いが続いているのですが、いざ具体的な金額を決める段階になると、これがなかなか一筋縄では行かない。まぁ当たり前ですけどね、普通の協議離婚でも(笑)。ざっくり円換算で5兆円とか7兆円程度と言われています。

そして、もうひとつ厄介なことがアイルランドと英国の国境問題。アイルランドという島は地図で見ると分かりますが、アイルランドと英国領北アイルランドから成り立っています。EU加盟後この陸続きの国境は実質的に無くなりました。ひとつの島のなかで経済圏もひとつに統一されたわけです。

例えば幹線道路も入り組んで北アイルランド側に入ったりアイルランド側に入ったりして建設されました。もちろん何回国境を出たり入ったりしても入国審査など全く無し。大型トラックが頻繁に通ります。

それがEU離脱となると国境の検問を設けなければなりません。とは言え、両サイドから物資を輸送するたびに4回も5回も国境通過のチェックしていたのでは、忽ち大渋滞になりますよね。そこで例えば通過車両10台の内1台を抜き打ち審査などの折衷案が出ているのですが、なかなか折り合えません。

更に複雑なのはメイ首相が解散総選挙で大敗したために連立与党を組んだのですが、そのなかに北アイルランドの少数政党も入っているということです。北アイルランドはEU離脱反対派が多数。今更アイルランドとの国境を再設定されても困るのです。それゆえメイ首相とEUとの話し合いにも、なかなか乗ってきません。

この二つの問題を考えただけでも、英国EU離脱交渉が如何に大変なことが分かるでしょう。

だから「協議」離婚は諦め、強硬突破案、交渉せずに離婚の案も現実味を増すわけです。

この問題は来年も引き続き市場を騒がせるでしょう。なお、ポンド相場は一喜一憂で乱高下を繰り返しています。

2017年