豊島逸夫の手帖

2021年8月31日

本日３１日の日経新聞朝刊「グローバル市場」面に首題の大振りの記事が載っている。

タイが本年４月と５月に計９０トンの金を購入。同国の金準備残高は２４４トンと過去最高の水準に。それでも外貨準備全体の６％に過ぎない。欧米の６０～８０％に比べ低い水準だ。
タイ中銀のセタプット総裁は「金は安全性、収益性、分散性、（可能性は低いが起こると影響が大きい）テールリスクのヘッジという主要な準備金管理の目的に合致する。」と明言した。中央銀行総裁が金準備に言及するのは極めて稀で異例だ。

更に、ブラジルが５４トン購入。トルコ、インド、ハンガリー、ポーランドなどの名前も挙がっている。
ワールド・ゴールド・カウンシル（ＷＧＣ）が世界の中央銀行に実施したアンケート調査では、金を購入する理由として「危機下のパフォーマンス」が最も多かった。「長期にわたる価値の貯蔵」、「ポートフォリオの分散」などが続く。

今後１２か月間で金準備を増やす意向がある中銀は、新興国で３１％に上った。先進国４％と対照的だ。既に外貨準備の６０～８０％を金で保有している先進国に比し、新興国は数パーセントに過ぎない。今後も新興国の公的金購入は進みそうで、これが金価格を支える要因となる可能性がある。
詳しくは日経新聞記事参照。

それにしても日銀は公的金購入に全く動かない。
なぜか。
米国に遠慮しているから。

金を買うという行動は、ドルへの不信任票ゆえ同盟国の米国に忖度しているのだ。その代わり世界第二位の規模の日本の外貨準備は、圧倒的に米国債（米国の借金証文）が多い。これはリスクだと思う。

米国から見れば、日本は米国債購入の「最優良顧客」。ＧＰＩＦも生保も長期保有してくれる。この点は日米外交交渉で日本がもっと強調して恩に着せて良いことだと思う。