2021年12月21日
米国の上院は定数100名で民主党・共和党が各50名と割れている。最終採決となればハリス副大統領(民主党)が最後の1票を持つ。民主党に1名の造反議員が出れば廃案となる危うさも孕む。
それが現実となったのがバイデン大統領の看板政策である子育て支援・気候変動対策などを盛り込んだ(円換算で)200兆円規模の大型予算案だ。かねてから反対の意志を表明していたマンチン上院議員が週末のテレビ番組で「その法案について、私はNO!だ」と、あっさり「最終通告」した。ホワイトハウスのパスキ報道官は直ちに強い反発の声明。「約束違反だ」と「うそつき呼ばわり」の如き文面は、あたかも与党の野党批判を連想させるほどであった。それほどに民主党内の内部分裂が激化しているのだ。そもそも日本流に言えばバイデン大統領も「国会対策委員長」のような立場に長く居たので、所謂「寝技」での調整役を自負していた。マンチン議員を自宅に招待してまで説得工作を続けてきただけに面子丸つぶれだ。マンチン議員の反対理由は巨額の財政支出懸念。本音は選挙区が石炭生産地区なので、「気候変動対策」強化に対する反感が強いこと。党内の立ち位置としてマンチン議員は中道派。対して子育てや気候変動は党内左派が強く要求するところだ。
これだけ感情的なもつれになり、市場では廃案を織り込み始めている。巨額の財政出動の有無は大きな材料だ。水面下で折衝は続いているが本当に廃案になれば過剰流動性相場の株や金には逆風になる。ゴールドマンサックスは早速廃案になれば米国GDP1%減速の予測を発表した。
筆者の視点はバイデン政権の求心力低下。来年中間選挙に向けて民主党益々苦戦という状況。既に共和党が知事選挙で勝利するなど、中間選挙では野党優勢の様相だ。特に民主党が過半数の下院が共和党へひっくり返る可能性がある。市場では下院は民主党が過半数割れとなるが、その差が20名か30名か、即ち民主党の「負けっぷり」の程度に関心が移っているほどだ。上院も共和党が一人でも上回れば完全な「ネジレ国会」となる。200兆円予算案に関してはおそらく「コロナ追加対策」などに「レッテルを貼り替えて」金額も減らし再度議論されると思う。
中間選挙を控え激戦区の民主党議員はハラハラで党内関係の修復を迫っている。
2022年の相場予測に関して米国政治要因も重要になっている。
なお、今週の市場はクリスマス休暇を控え参加者も減り、値動きは荒れやすい環境だ。