豊島逸夫の手帖

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国際金価格、底値圏で底堅く推移

2021年3月15日

12日、NY市場では米長期金利は1.6%再突破。
NY金も瞬間的に再び1700ドル割れ(KITCOグラフ赤線参照)。

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しかし、その後1720ドルまで急反騰。
これは、金価格が底堅い証左と見る。

米国では5月1日までに18歳以上の全国民にワクチン接種のバイデン大統領発言あり。日本人としては羨ましい。米国が世界のワクチン市場をクラウディングアウトして先取り占有している感じ。
こうなると本稿後半で詳述するが、インフレリスクも強まり、インフレに強い金が買われるシナリオだ。

投機筋も、これ以上、空売りの追い討ちはせず、買い戻し。
世界の金ETFからはマネー流出が続いているが、想定どおりアジア・中東の現物需要が買い支えるという教科書的展開だ。
どこまで金利急騰が続くか不透明な部分もあり、断定はできないが国際金価格底入れは近い。

外為市場の円安も110円まで進行する可能性あり、円建て金価格は更に底堅い。今や円独歩安である。ドル金利急上昇の当然の結果。

昨年は国際金価格が上がっても、円安で円建て金価格が過去最高値を更新した。そして今年は円安が国際金価格反落を相殺している。
今年は円高説が多かったが、蓋を開けてみれば、真逆の展開だ。

長期本欄読者ならご存じのとおり、筆者は筋金入りの「長期」円安論者。資産の半分はドル建て資産(含むゴールド)で「長期的に」保有しているので、ムフムフ。
とは言え、110円を大きく超えるほどの円安は見ていない。

今週は米国でFOMC、日本で日銀金融政策決定会合あり。まだ米国は金利上昇の余地があるが、黒田総裁は金利変動幅を一定に抑え込むイールドカーブコントロールをいじる気はなさそう。つまりドル金利上昇に対応して、円金利も上昇を許容することは考えていないと国会で答弁している。ここで円金利上昇を放置すると、すわ、日銀、金融引き締めかとの市場の先走りを誘発して、株が暴落しかねないので慎重にならざるを得ない。その結果ドル金利は上昇、円金利は変わらずとなると、日米金利差は拡大して、更に円安が進行することになる。マクロ経済的に円安は円安でメリットもデメリットもあるので、黒田総裁も苦肉の綱渡りを強いられている。

さて、今週は風雲急を告げる。
フィリピン株など新変異種も発覚。変異種対策も喫緊の課題。でも五輪聖火リレーも開始予定。そのため緊急事態宣言解除も。果たして日本国民が納得するか。五輪強行のための緊急事態宣言解除。正念場だ。

そして米中関係。バイデン政権はやけに日本重視の姿勢。バイデン政権誕生後、最初の外国首相大統領クラスとして菅氏と初の対面会談@ワシントン。今週はバイデン政権の新国務長官と国防長官のコンビが初の外遊先に選んだのが日本で2プラス2、対中国問題議論。その足で米国務長官がアラスカのアンカレッジに飛び、米中外交トップ会談。思うに香港、台湾、韓国と中国近隣地域は有事リスクあり、日本が極東地域の最後の砦と見ているのか。
国内外ともに世の中は大きく動いているね。

2021年