2021年1月20日
イエレン次期財務長官、議会承認のための公聴会は3時間超えの長丁場。上院議員が持ち時間5分で入れ替わり質問を浴びせ続けた。各議員の地元を意識した演説調が目立つ。時節柄、異例のリモート公聴会ゆえ、画面の乱れ、音声の途絶えが頻発した。
それを受けるイエレン氏はFRB議長時代に定期的に議会公聴会に呼び出されていたので、経済に疎い政治家たちへの対応は慣れている。
FRB議長時代にはマーケットは本当に「お世話になった」ものだ。困った時のイエレン頼み状態であった。
相変わらずブルックリン訛りの喋りが懐かしい。冒頭の「所信表明」では、NYのブルックリン地区で経済的に裕福とは言えない家庭で育ったことをいきなり語った。政治的に独立しているFRB議長から民主党員の閣僚の顔に変身していた。
議員からの質問がバイデン増税問題に及ぶと、ダウ平均が昨日の最安値水準に沈み、市場にも緊張感が漂った。しかしそこはイエレン節での「神対応」。「コロナ禍の今、公的債務を考える時ではない。維持可能な(サステナブル)財政支出は長期的問題だ。」「今、大胆な対応をせねば、将来の財政負担が増える。」と語り「Act Big! 財政は大胆に」のキーワードで乗り切った。信頼される人柄だからこそ、この一言が市場に対する「神対応」になる。ダウ平均も持ちこたえ結局116ドル高で引けた。
やはりイエレン氏は市場心理を落ち着かせる何かを「持っている」と感じた。
因みに女子プロゴルファーのヒロイン渋野日向子選手が全米女子オープンで優勝争いした時に「やはり彼女は何かを持っている」と表現されたが、「私が本当に『持っている』なら優勝していますよ。」と語ったものだ。
イエレン次期財務長官指名は、疑心暗鬼が横行するマーケットに対するバイデン氏の適材人事と言えよう。
とは言え「下町出身」のイメージを敢えて冒頭に打ち出し、質疑応答でも「ウォールストリートよりメインストリート(庶民層)」との表現を異議なく受け入れた。FRB議長時代の銀行規制の事例も誇らしげに語ってみせた。「規制には凄腕」とされるSEC(証券取引委員会)委員長とCFTC(商品先物取引委員会)委員長人事で、ウォール街は既に規制強化警戒モードに入っている。ここはキッチリ釘を刺した感がある。
「イエレンプットとかで市場の皆さんから頼りにされていたが、私に甘えてばかりではダメよ」と諭されている如き印象を筆者は受けた。
更に、中国に対する激しい敵視表現にもイエレン氏の民主党員としての側面が透けた。「虐待的、不公平、不法」などの形容詞を連発して中国側を批判した。通貨安誘導も許さずの構えだ。「通貨安競争としてのドル安は容認せず。」と明言した。「それでは、米国側もドル安は志向しないのか」と突っ込みたくなるところだ。ここは今後のイエレン発言を見ながら「要経過観察」となろう。
なお、国債増発に関して、低金利ゆえ資金調達コストが低いことも強調した。ここはパウエルFRB議長との連携が「要経過観察」だ。「50年債発行」について質問された時には、待ってましたの如く「現在の低金利を視野に考慮」と語っている。「低金利」への言及は案の定、民間でのテーパリング議論をも活発化させた。メディアでのエコノミストたちの見解も割れていた。
総じて、市場目線ではスイートだが、噛み締めるとほろ苦さも残るチョコレートを味わった感がある。
金市場も史上最高値更新の市場環境を醸成してくれたという意味で、イエレンさんにはお世話になりました(笑)。皮肉な成り行きですが、イエレンさんが財政赤字問題をうまく制御できると、金の出番は無くなります。だからと言って、個人的に米国の財政政策に失敗を望むわけでもありません。常日頃から説いているように、金は長期保有して役立たないのが一番なのですよ。特に今回は敵がウイルスですからね。経済面ではイエレンさんに頑張って欲しいと思います。御年74歳。FRB議長時代から過労で倒れる寸前のこともありました。でも黒田総裁も彼女より年上ながら、依然第一線で気張っていますからね。さすがに78歳の大統領にはホントに4年間全うできるの?と思ってしまいますが。仮にカマラ・ハリス副大統領が昇格したら、大統領も財務長官も女性ということに。東京都知事は女性ですけどね。あの方の評判は芳しくないけれど、エジプト・カイロで留学しただけあって金好き。彼女がワールドビジネスサテライト初代キャスターをやっていた頃は、4週連続で金特集やって、そのたびに私も生出演していました。古いビデオテープに収録されてアーカイブで残っています。今やお宝映像かな。東京都知事、金買いに走る(笑)。