豊島逸夫の手帖

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3連休明けNY市場、日本株政変ラリーを試す

2021年9月9日

レイバーデイの週末明けは、例年NY市場が秋相場入りの時期となる。本日も既に日本時間午前中から、アジア時間帯をフォローするアーリーバード(早起き鳥)と呼ばれるトレーダーたちが活動を開始している。3連休前の先週金曜日の段階で日本の政変は把握していたものの、連休前ゆえ新たなポジションを作るタイミングではなかった。そして「留守中」に日経平均は3万円近傍まで急騰した。
このような展開で外国人投資家はいきなり3万円を買えるか?

筆者が注目しているのは、インド株がここにきて新高値を更新している事例だ。ウォール街も注視している。
5月初旬には感染者数が1日40万人を突破していたが、現在は4万人程度まで急速に減少している。4-6月期のGDPも前年同期比20%増と発表された。そこでインドの個人投資家による小型株買いからインド株ラリーが始まった。そこに外国人投資家も参入して、外国人のインド株ポジションは買い越しに転じた。買いの対象銘柄も多岐にわたる。ワクチン接種期待が徐々に高まり、コロナとの共生社会を先買いする動きが拡大中だ。
NY市場のファンドの間でもインド株の動きは注目され、米国株に高値警戒感を抱く投資家による国際分散投資の新たな対象国になりつつある。

そこに、思わぬところ、つまり日本で政局が動き、期待感が芽生えた。インド株同様に過剰流動性相場という市場環境で出遅れ株として物色されても不思議はない状況だ。
日本の感染状況はまだ予断を許さないが当面減少傾向に転じた。支持率の低迷していた首相が退陣する。次の首相に誰がなっても、例えばデジタル庁関連とか再生可能エネルギー関連のテーマは変わらないのではないか。
一方で、日本経済に対する不安も累積している。相変わらず「物価が上がらない国」の代表格というレッテルが貼られている。少子高齢化という人口動態も変わらない。

しかし、国際分散投資という視点では、世界を見渡してもどの国も問題を抱えている。結局運用対象は消去法で決まっていく。
日本株に関しては、そのポテンシャルに対して運用配分があまりにアンダーウエイトであったとの見直しが入っても不思議ではない。
それゆえ中長期の外国人投資家の間で、日本株は押し目を拾う動きが感じられる。

但し、いきなり日経平均3万円からのエントリー(参加)はさすがにハードルが高い。
現水準から更に新たな買いのポジションを仕掛けるとすれば、短期運用のヘッジファンドとなろう。所謂トレンドフォロー型で上げの流れのモメンタムに乗って、こまめに売買を繰り返すファンドである。政治相場は予測が困難なだけにボラティリティーは高まりやすい。それだけ売買チャンスが増えるということだ。彼らにとって日本株ラリーの目先の賞味期限はあと2週間程度。9月21日、22日にはFOMCが開催され、8月雇用統計の想定を超す下振れにパウエル議長が年内テーパリング発言を修正するか否か注目されているからだ。

ジャクソンホール中央銀行シンポジウム、8月米国雇用統計、そして9月FOMCと続く国際市場の流れの中で生じた日本政局異変。運用難に悩むファンドにとっては、要経過観察のローカルイベントという位置付けだ。特に短期筋は買いでも売りでも、いつでも出動できる臨戦態勢で見守っている。

2021年