豊島逸夫の手帖

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米国経済成長ピークアウト説

2021年8月18日

ワクチン接種により、これまで自粛していた米国人の個人消費が一気に噴出した結果、米国経済成長率は今年4-6月期に6.5%を記録。コロナ前の水準を超えました。
しかし、年率6~7%水準が米国経済成長のピークで今後頭打ち傾向に転じるとの見解が増えています。来年は2%台までの減速予測も市場には流れます。
そもそも成熟した米国経済の6%成長は異常であり、2~3%程度が所謂「巡行速度」と見られます。
この経済減速が既に始まっている証しとして注目されたのが、17日に発表された米国7月小売売上高です。前月比1.1%減。事前予測の0.3%減を超える落ち込みとなったのです。
その背景は何と言っても変異種デルタ株。「ワクチン接種したから、もう大丈夫。これからは外食も旅行もできる。」との期待で盛り上がった個人消費部門が失望で委縮しています。最新の報道でも米国保健当局が変異種対応のワクチン3回目接種(ブースター接種)を推奨しています。ファイザーもモデルナも変異種対応ワクチンを開発中。現時点ではモデルナの方が変異種には有効とされています。但しその有効期限は6か月。それゆえ米国保健当局も2回目接種から8か月後にブースター接種を勧めています。
今後は半年に一回のコロナワクチン接種が必要になるのでしょうか。今後の研究開発が待たれます。

この変異種の影響は日本でも同じ。まさに連日記録的な変異種を含む感染者数が発表されています。日本株にも変異種不安で下押し圧力がかかります。
また、変異種の影響は米国金融政策をも動かしています。この猛威が続けばテーパリング(緩和縮小)どころの話ではなくなるでしょう。パウエルFRB議長もデルタ株が予見不能として注視する姿勢です。
但し、市場は既にテーパリングを織り込んでいるので、仮にデルタ株拡散によりテーパリングが棚上げされたら、これはサプライズでしょうね。そこで金価格がどのように反応するか。これはその場になってみないと分かりません。最近の米ドル金利下落現象は依然「謎」とされているからです。要は金利動向が視界不良で読めない。一般論としては米ドル金利が上がれば、金利の付かない金は売られ、同金利が下がれば、金は買われることになるのですが。
さらに、市場は今月末に開催されるジャクソンホール中央銀行フォーラムでのパウエル講演に注目しています。今後の金融政策の方向性を明示する可能性があるからです。8月の最大ビッグイベントになりそうです。

ところで、変異種対応として米国では再びマスク着用義務が拡大しています。その中でマスク不要論を展開してきたテキサス州知事が感染しました。2回接種済でも感染という所謂「突破型」、「ブレークスルー」の事例です。
これから日本でも「突破型」感染者が増えるでしょう。ワクチンへの期待が高かっただけに国民の失望は大きくなりそうです。
首相も急に「危機的」と語り始めました。このコラムでは政治的コメントは避けていますが、さすがに現首相のリーダーシップ欠如は残念でなりません。「危機的」と語る時でもプロンプターの原稿を読んでいる。テレビカメラを通じて目線を国民に向けて語ることができません。最後に「と思います。」と付け加えることも自信の無さと映ります。新たなリーダーが必要と個人的には感じています。

2021年