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イエレン氏のテーパリング(量的緩和縮小)誘発リスク

2021年1月19日

本日のマーケット注目イベントはイエレン次期財務長官指名承認のための議会公聴会だ。

既に一部のメディアが、対コロナ予算に関して「大きな行動を取る」との見解を示すと報道。株式市場では期待感が膨らんでいる。
とは言え、これもまた「いいとこ取り相場」と言えよう。

財政出動が大型化すればするほど、年後半から来年にかけてFRBのテーパリングリスクが高まるは必至だからだ。積極財政により経済回復が本格化すれば、FOMCでも量的緩和を現在のペース(月1200億ドル)で続けるのか否か議論されよう。現状ではパウエルFRB議長は未だテーパリングを議論するほど楽観的ではないとの姿勢だ。クラリダFRB副議長は更に具体的に「年内は無い」と語っている。しかしFOMC内は一枚岩ではない。例えばボスティック・アトランタ連銀総裁はその可能性を否定しない。

もしイエレン氏がFRB議長職にあったなら、ハト派ゆえテーパリングはきっぱり否定したであろう。しかし今回同氏はテーパリングを誘発しかねない立場に廻る。そこで市場が期待するのはジャネット・イエレン次期財務長官とジェイ・パウエルFRB議長の「J-Jコンビ連携」だ。

テーパリングが市場かく乱要因になるか否かは、ひとえに「マーケットとのコミュニケーション」次第である。ドル金利上昇局面で、イエレン氏がバイデン政権の立場で「大きな行動をとる」と繰り返し、パウエル議長が景気回復に楽観論を唱えれば、市場は「テーパリング」リスクに怯える結果になりがちだ。そこでパウエル氏が「とは言え景気回復は未だ覚束ない」というような発言で釘を刺せば市場は当面安堵しよう。それほどに今のマーケットはFRB依存症となっている。「FRBには逆らうな」とも語られる。

それにしてもイエレン氏は数奇な宿命を背負う稀有な人物だ。

FRB議長時代にはテーパリングの「実行役」であった。退官後にバーナンキ元FRB議長との壇上対談で「私は貴方の後始末役に廻ったのよ」とのジョークで会場を笑わせたことがある。その時は両氏とも民間のブルッキングズ研究所に属していたので率直なトークになったのだ。バーナンキ氏が始めた「マネーばら撒き」の「回収役」という、言わば「貧乏くじ」を引いたとのニュアンスがこめられた発言であった。

そして時代は巡り、今や市場のテーパリング議論では事と次第によってはイエレン氏が「悪役」になりかねない。

バイデン政権財政支出は第一弾が対コロナ支援策(1.9兆ドル案)、そして第二弾がクリーンエネルギー部門やインフラ投資などの景気刺激策で、ここでも兆ドル単位の規模が予想される。その司令塔がイエレン氏となるからだ。

マーケットには2013年にバーナンキ氏がいきなりテーパリングに言及して引き起こした「テーパータントラム」、別名「バーナンキショック」が未だに新鮮な記憶として残っている。

今市場が知りたいことは、果たして何兆ドル規模の財政出動だとドル金利急騰が「臨界点」を超えるリスクが強まるかということだ。例えば仮に第一弾、第二弾合計で4兆ドル近い数字になれば、米国10年債利回りが1.5%程度の「臨界点」を超え、債券市場では米国債のクレジットリスクが意識される可能性がある。所謂「悪い金利上昇」懸念だ。そこでFRBはどこまでのオーバーシュートを容認するのか。

救いは超低金利ゆえ国債増発による資金調達コストが低いことだ。低インフレ率が構造的要因にあるとすれば、4兆ドルの追加財政投入でもイエレン氏は財政リスクを制御できる可能性がある。ここではFRBのインフレ予測も重要な要因となろう。

かくしてイエレン氏とパウエル氏の発言がマーケットを揺らす局面に身構える市場である。

金市場はバーナンキショックの時、換金売りに見舞われ急落した。ゆえに筆者の2021年金市場公式見解でもリスクとして言及した。但しそのリスクの根っこには膨張する財政赤字リスクという金価格長期的上昇要因がある。金は中長期的上昇過程にあるが一筋縄でゆくほど簡単な話ではないよということだ。

さて、私の旨いもの三昧も自粛中。このブログも写真が少なくなったね。六本木ミッドタウン虎屋の季節の生菓子も千疋屋のパフェも随分とご無沙汰だ。

実は今、YouTubeで「豊島逸夫チャンネル」みたいな話が持ち上がっていて、周りのスタッフたちが動いているところ。私としてはマーケットが大きく動いた時にタイムリーに発信できれば良いかなと考えている。例えばマガーリ@自由が丘とか、誠鮨@お茶の水のカウンターなど、できれば気さくなところで収録とか。旨いもの談義とか、スキーやゴルフ談義になると話が止まらなくなるリスクも(笑)。
それから今朝の日経朝刊商品面に「外貨準備、埋蔵「金」上乗せ 50年ぶり大幅増、造幣局保管分 市況考慮し市場売却回避」との記事あり。

更に投資情報面「一目均衡」コラムには「株高、『金建て』で見る別世界」との面白い発想の原稿もあり。

2021年