豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. インフレ期待率、新高値更新、パウエル氏を疑う市場
Page3253

インフレ期待率、新高値更新、パウエル氏を疑う市場

2021年5月6日

ダウ最高値更新が囃された5日のNY市場でプロの視点は5年ブレークイーブンインフレ率が年率2.68%まで上昇したことだ。金はインフレヘッジで買われるので期待インフレ率は重要な指標だ。

対コロナ有事対応で未曽有の財政拡張・金融超緩和が実施されて以来の最高水準である。今年年初1月4日には1.98%、今回の日本の連休前4月28日には2.54%であった。連休中に良好な経済指標が発表され、イエレン財務長官の「金利上昇やむを得ず」発言もあった。その結果5月5日には2.68%まで上昇したのだ。
米5年債実質利回りもマイナス1.88%にまで下落している。GW前の4月28日にはマイナス1.68%であった。
「これでもパウエルFRB議長はインフレは一時的と頑なに言い通すのか」
既にマーケットでは「FRBに逆らうな」から「FRBを疑え」との反応が強まりつつある。

アップルなど大手ハイテク企業の決算は良好であったが株価は伸び悩んでいる。「インフレの足音」、「テーパリングの可能性」に怯える投資家が増えているからだ。

パウエル氏は特に雇用面で労働参加率が依然低位にあることを問題視している。就職活動を諦めた長期失業者が明確に減少しなければ緩和縮小には動かずとの姿勢だ。
その意味では今週末の雇用統計の重要度が増す。
既に5日に発表された民間部門の雇用者数を示す4月ADP雇用統計は74.2万人増と良い結果が出ている。
7日発表の雇用統計も米国でのワクチン接種進展・コロナからの回復を映し良好な数字が予想されている。

とは言え、パウエル議長が俄かに「テーパリング」考慮を示唆するとも思えない。
市場は8月下旬のジャクソンホール中央銀行会議をひとつの節目として見ている。
それまでにインフレ期待がどう動くか。
パウエル議長も注目せざるを得まい。

2021年