2021年7月5日
筆者がワールド・ゴールド・カウンシルにいた頃は「ワールド・ゴルフ・カウンシル」と言われたものだ。それほどゴルフ好きである。今や女子ゴルフ界では「ゴールド世代」、「プラチナ世代」など若手の活躍が目覚ましい。次は「パラジウム世代」か(笑)。
また、コロナ禍を機にゴルフ人気が若年層化。ゴルフ会員権相場も上昇が目立つ。株式市場でも松山選手のマスターズ制覇の時にはゴルフ関連銘柄が注目された。オリンピックでのゴルフ競技も国民的話題になろう。
一方、米国では6ホールのエンターテインメント化したゴルフ場が人気だ。スタート前に「とりあえずビール」。ドレスコードもなく、ジーンズでもサンダルでもOK。音楽も流れる。スコアもつけずワイワイやって、最後に待ち受けるのは「スポーツバー」。6ホールは名付けて「ビール巡り」。
正統派ゴルファーから見れば、けしからん話のようだが、これが人種を問わず若者や女性層には受けて、米国ゴルフ市場への新規参入者を増やしている。伝統的なゴルフ人口とは全く異なるセグメントゆえゴルフ市場の拡大に貢献する結果となっている。タイガー・ウッズも共同経営者としてカジュアルゴルフチェーンに参加したことでお墨付きを得た感もある。
カジュアルゴルフの形態は多様化している。
打ちっぱなし練習場は、ボーリング場のように3~4人が交代に打ち、飛距離や方向性などの結果がモニター画面に示される。使われるゴルフボールにはマイクロチップが埋め込まれ、データが瞬時に測定できるのだ。アウトドアゆえ屋内シミュレーションゴルフより解放感がある。後方のテーブルには飲料や食べ物が豊富に並ぶ。大型スクリーンで参加者の記録を示せば「コンペ」も可能だ。
高級パットゴルフ場も人気だ。「ミニゴルフコース」が夜間イルミネーションに照らされ、独特の雰囲気を醸し出している。
このようなカジュアルゴルフ成長の背景には、伝統的ゴルフがプレーヤーに強いる様々な「ルール」に対する心理的抵抗感も指摘される。スカートの長さ、ゴルフ帽のかぶり方、ジーンズ禁止、シャツのズボンへのたくし込み方などを「窮屈」と感じる人たちは若者だけに限らない。彼らは彼らなりに「伝統的ゴルフ場」とは全く別の世界で自分たち流のゴルフを楽しむ。恐らくこの傾向に共鳴する人たちは若者以外にも少なからずいると思う。筆者が日経新聞本紙のゴルフ関連記事に紹介された時「エンジョイ・ゴルフで、ライバルは家内」との見出しがついた。週末に仕事環境を離れ、家族とスコアなどつけず、高原の空気や海の波音を楽しむゴルフだ。一方、伝統的なゴルフ場でゴルフ仲間とプレーする時は、きっちりルールとマナーは守る「ソーシャル・ゴルフ」に徹する。
日本のゴルフ市場も女子プロゴルフ界では「ゴールド世代」、「プラチナ世代」など若手の活躍が目覚ましい。娘をプロゴルファーにとの親の願望も今や珍しくない。一方で働く女性の間では週末ゴルフウェアのファッションを楽しむカジュアルゴルファーも増えている。新たな市場のセグメントが出現すれば、供給過剰のゴルフ場市場内で、既存ゴルフ場のリニューアルにより新たなゴルフスタイルが提唱されることになろう。打ちっぱなし練習場が社交の場となる事例も出てきそうだ。