豊島逸夫の手帖

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雇用統計サプライズ

2021年9月6日

3335.png前回本欄「いよいよ注目の8月雇用統計発表」に書いたシナリオの中で「雇用下振れ」が現実になった。テーパリングは遅れ、ゼロ金利は2023年まで継続するとの見方が勢いを得て、金利を生まない金は買い直された(KITCOグラフ赤線参照)。と言っても1820~30ドル台程度。

新規雇用者数が事前予測730,000人のところ、蓋を開けてみれば僅か235,000人増に留まったのだ。思わずツイッター@jefftoshimaで「なんじゃ これ!?」と呟いてしまったほど、口あんぐりの市場予測大外れ。筆者は統計的にこの数字は「外れ値」、「ノイズ」、つまり突発的例外的数字ではないかと見ている。とは言えデルタ株の影響で雇用が伸びないことは事実である。特にレジャー関係のセクターで8月雇用増がゼロに近い。

金市場も教科書どおりに買いで反応したものの、1830ドル近辺では早くも手仕舞い売りが出ている。要はこの数字の真偽を計りかねているのだ。要経過観察。株もドルも金利も特に大きな動きは見られず(日本株だけ菅首相退陣で大きく買われているが、これは別世界)。

結果的に9月FOMCでテーパリング発表の線は消えたと言ってよかろう。10月はFOMCが開催されないから、早くて11月、場合によっては(デルタ株次第で)来年1月にずれ込みそう。とは言えテーパリング開始の方向性は変わらない。

さて、金曜日にブログを書いた直後に突然菅首相の退陣が報道で流れた。とは言え世界は日本の政変に無関心。海外メディアも国際面の3番、4番記事程度の扱い。NY市場は歴史的豪雨やアフガン問題で「それどころではない」。「毎年、首相が変わる国」に逆戻りとの解釈が流れている。記者会見の質問の答えまで原稿を読む現首相に外国メディアの東京駐在員記者たちも呆れており、「リーダーシップ」、「コミュニケーションスキル」を持つ人物を首相になどと書かれている。基本的に現首相は野球に例えれば「中継ぎ」投手。コロナ終息方向に導くクローザーとコロナ後の日本経済を軌道に乗せる「先発型」の人材が必要だ。複数回の首相交代劇となりそう。

2021年